天使も、ヒトラーも見事に演じきったブルーノ・ガンツさんが亡くなった。第1次大戦中、鳴門市大麻町にあった板東俘虜収容所を舞台にした映画「バルトの楽園」で、ドイツ軍総督役を務めた本県に縁のある名優である

 14年前、映画の製作発表では、こんなメッセージを寄せていた。「(民族や文化の違いを超えた融和という)この映画の中で語られることこそ、今の世界が必要としていることではないか」

 この前年、「ヒトラー~最期の12日間~」でヒトラー役を演じたから強く実感したのだろうか。平和を希求する思いが伝わってくる

 「バルト」は当初、日本人が自らを褒めたたえる、ある種の国のプロパガンダ的な作品に思えたそうだ。「懐疑的」だったとパンフレットにある。だが、ドイツ人捕虜を人道的に遇した収容所の松江豊寿所長の人生を詳しく知り、考えが変わったという

 鳴門でのロケ。しつらえたオープンセットが、カメラに写らない部分まで丁寧に作られていたことで、さらに作品への信用度が高まった

 ロケの合間に、霊山寺などの散歩に同行した石川栄作・徳島大名誉教授(ドイツ文学)は「そう言えば、映画のラストで庭園を見つめる場面はガンツさんの要望で急きょ取り入れられたようです」。日本びいきに磨きがかかった、その姿が忘れられないという。