日本企業の英国での事業を見直す動きが拡大している。

 今月に入り、日産自動車が現地での一部生産計画を白紙に戻すことを発表したのに続き、ホンダも英国南部の工場での四輪車生産を2021年中に終了することを明らかにした。

 英国の欧州連合(EU)離脱期限である3月29日まで1カ月余に迫る中、企業活動への影響が不透明なことが背景にあるようだ。

 離脱問題を巡り迷走を続けるメイ政権は、議会との対立に加え、経済でも失速懸念が広がるなど、厳しい局面を迎えている。離脱の代償の大きさを自覚し、不安の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ。

 自動車産業は英国の主要産業の一つだけに、日本の自動車メーカーの縮小・見直しは大きな打撃だ。

 とりわけ、ホンダの工場閉鎖は想定外だったのか、メイ首相はホンダに「失意」を伝え、クラーク民間企業相も「壊滅的な決定だ。深く失望している」と落胆をあらわにした。

 ホンダは1992年から英国で乗用車の生産を始め、2018年には英乗用車全体の10%強に当たる約16万台を生産した。工場閉鎖により、従業員3500人に加え、部品メーカーなどを含め7千人を上回る雇用が失われる可能性があるという。

 英国からの撤退は自動車産業だけでない。電機大手パナソニックは欧州本社をオランダに移転したほか、ソニーも3月に同国に移す予定だ。

 企業が不安を募らせているのは、EUと取り決めのない「合意なき離脱」が現実味を帯びてきたことにある。

 税関の手続きなどが煩雑になり、事業を従来通り運営できなくなるばかりか、英国とEU間で関税が復活し、欧州経済全体に大混乱をもたらしかねない。リスク回避へ動くのは当然だ。

 さらに、EUは2月1日に発効した日本との経済連携協定(EPA)に基づき、日本製乗用車に課している10%の関税が8年目に撤廃される。英国で生産するメリットは今後も小さくなろう。

 英国経済は既に減速傾向にあり、さらなる弱体化が指摘されている。にもかかわらず、政府や議会の危機感が薄いのはどうしたことか。

 英政府とEUの離脱協定案は昨年11月に正式決定したが、先月中旬の英下院で大差で否決された。英領北アイルランドの国境管理問題に批判が出たからだ。

 メイ首相は20日、ユンケル欧州委員長と会談し、国境管理に関する修正案などについて協議したものの、具体的な進展はなかったという。

 英国内やEU側から「合意なき離脱よりはまし」として、離脱延期の声も上がっているが、根本的な解決策にはならない。

 英国に残された時間は多くない。メイ政権と与野党には非難の応酬をやめ、実のある議論を望みたい。