郷土史家の湯浅良幸(ゆあさ・よしゆき)さんが23日午前3時半、敗血症のため阿南市内の病院で死去した。87歳。自宅は阿南市上中町南島736。葬儀・告別式は26日に近親者で済ませた。
15歳の時、海軍の学校で終戦を迎え、みそ醸造の家業の傍ら郷土史研究に打ち込んだ。17歳の時に始めた民話の調査と収集は、後の研究の原点となった。
26歳で刊行した「阿波貨幣史」が専門家に評価され、日本貨幣協会評議員に。20代の若さで、県史編さん委員にも就いた。
編集と出版活動に熱心で、自然・社会科学分野の専門家を見いだして執筆を依頼。郷土双書、徳島市民双書などを出し、後進の育成につなげた。
文化財の保護にも尽力し、阿南市文化財保護審議会長、県市町村文化財保護審議会連絡協議会、阿波学会の各会長を歴任。2005年、地域文化功労者表彰を受けた。
平和を望む思いが強く、憲法九条への理解を深め、改憲に反対する「九条の会阿南」の代表世話人も務めた。
生涯現役を貫き、07年から本紙に「阿波の民話」を連載。来年3月に迎える4千回分まで書き上げていた。
鳴門教育大の高橋啓名誉教授は「スケールの大きな文化人だった。バックボーンには戦争(軍隊)体験からくる反戦、平和を望む思いがあった。徳島の昭和の語り部が逝ってしまったとの感が強い」と語った。