井下俊さん

 東日本大震災の影響で、医師不足に陥った福島県南相馬市の私立病院に徳島から毎月通い、非常勤医として内科診療をサポートする。「そこに暮らし続ける人々がいるなら、助けになりたい」。強い思いが、6年半以上にわたる活動を支えている。

 津波と原発事故の爪痕が色濃く残る南相馬市。若い世代は流出し、住み続ける市民の多くは高齢者だ。医師不足も一向に解消されない。そんな現状を案じて、病院を運営する医療法人に支援を申し出た。

 苦境の中で医療を必要としている人々に寄り添ってきた。徳島県内の病院で働く傍ら、1999年から海外での医療支援活動に携わり、東ティモールやパレスチナ、イラクなどを訪問。紛争やテロで混乱する地域に入り、小児がん治療や地元医師の指導などに奔走した。

 医薬品が不足し、基本的な医療行為さえままならない状況の中、無力感を覚えることもあった。それでも「困難に直面する人々を見て見ぬふりし、のほほんと暮らすわけにはいかない」。自身に責任はないにもかかわらず苦境に立たされる人々に、一人の医師として向き合うことをライフワークとしている。

 福島で診る患者の中には、避難生活を長く強いられた人もいれば、身内を震災で亡くした人もいる。その悲しみや苦しみは計り知れないが「皆必死になって生きている」と感じる。「震災後」を生き抜く人々に、これからも伴走していくつもりだ。55歳。