ベトナムの首都ハノイで行われる、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の2度目の首脳会談は、「完全な非核化」への期待より、米国が「見返り」で譲歩することへの懸念が強い。

 昨年6月の初会談で合意した「非核化」の進め方で双方の隔たりが大きく、膠着状態のままだ。会談直前の今も、具体的措置で折り合いが付いておらず、段階的な非核化を主張する北朝鮮に対し、トランプ政権の譲歩する姿勢だけが目立っている。

 会談の結果によっては非核化作業が長期化し、核兵器の温存を招く恐れもある。

 トランプ氏は今度こそ、曖昧な状態が続かないよう金氏から非核化への具体的措置を引き出してもらいたい。

 北朝鮮の核開発の実態は未解明な部分が多く、検証可能な非核化のためにはウラン濃縮計画を含め核兵器や核施設のリストの申告が不可欠だ。

 米国は当初、申告を強く要請してきたが、北朝鮮がかたくなに拒んでいるため、後退に転じた。

 現在議題に上がっているのは、東倉里ミサイル施設や寧辺核施設の査察・廃棄で、既に保有する核戦力の削減にはつながらないとされる。

 それでもトランプ氏は、非核化の早期実現にこだわらないとして、核・ミサイル実験の停止を高く評価する。

 来年の大統領選での再選に向け、難航する非核化交渉より実験停止という「事実」を強調したいとの思惑からだ。

 会談でも、外交的な成果を演出するため、形式的な合意発表にこだわるのではないかとの指摘もある。前のめりの姿勢は、北朝鮮に足元を見られかねず、心配だ。

 金氏は非核化の見返りに、制裁の一部緩和のほか体制保証や米韓合同軍事演習の停止などを要求するとみられる。

 とりわけ、制裁緩和は経済再建を目指す上で必要不可欠な条件となるため、南北の経済協力事業を特例として制裁対象から除外することも求める考えだという。

 非核化への具体的措置に対し、どの程度の見返りを示すか。譲歩するにしても、非核化への明確な道筋が担保されなければならない。

 成果を急ぐトランプ氏に対し、日本政府にも警戒感が広がっている。

 米国本土を射程とする大陸間弾道ミサイル(ICBM)廃棄だけを先行させたり、なし崩し的に制裁緩和を進めたりしないか、といった点だ。

 首脳会談を前に、安倍晋三首相はトランプ氏と電話会談し、「核、ミサイル、拉致問題の解決に向けて緊密に連携していくことで一致した」と述べたが、不安は拭えない。

 とはいえ、拉致問題ではトランプ氏を頼るしかないのが現状だ。

 首相は昨年6月の米朝首脳会談の際に、金氏と直接会談する意向を示したが、一向に進展していない。この機を逃さず、首相は決意を実行に移さなければならない。