春めいてきたが、バイクではちょっと寒い。そんな日でも、徳島市から1時間とかからない。阿波市の国指定天然記念物「阿波の土柱」に足を向けた

 奇勝である。同様の景観で知られる観光地は世界に数カ所しかない。お堅く言えばこの通り。「約100万年前から70万年かけて阿讃山脈から流れ出た土砂が何層にも堆積してできた砂礫層が、断層の活動により隆起した場所。土柱はその砂礫層が浸食してできたものである」

 有名なのは波濤ケ嶽。そびえる土の柱を眺めてみると、おや、子どもの頃に見たのとはどこか違う。もっと迫力がなかったか。これは当方だけの感想ではなく、地元のお年寄りも「わしが若い頃は」とこぼすのが常らしい

 「土柱は生き物です。数十年単位で姿を変えていく」。市教委社会教育課、林泰治さんの口調が熱を帯びた。山肌を風雨が彫り込んだ土柱は、自然の芸術ではあっても、変化の速度は想像以上に早い

 5年前、周辺の樹木を伐採したことで、本来の浸食作用が復活した。柱の間のひだが今、次第に深くなっており、輪郭も鮮やかな壮大な景観が生まれつつある。近くに温泉もあって観光客は年10万人。市は今年から集客強化に乗り出す

 ついでに記すと、遊歩道を上って崖から見下ろせば、これは相当怖い。「なめんなよ」と目前の土柱が言った。