あす3月1日は、韓国にとって特別な日だ。日本の植民地支配に抵抗して起きた「三・一独立運動」の記念日である。今年は100年の節目を迎える。

 文在寅大統領はこのタイミングをとらえ、国民に民族主義を鼓舞している。反日カードを南北融和政策への追い風にしようとしている。

 ベトナムで始まった米朝首脳再会談の推移と同様、三・一を巡る動向は、日本と朝鮮半島との関わりに大きな影響を与えかねない。

 文政権の反日一辺倒には首をかしげざるを得ないが、わが国の安全保障上、日米韓の連携が不可欠なのも事実である。北朝鮮の非核化、拉致問題の進展に向け、無視できない隣国だ。

 「売り言葉に買い言葉」のごとき感情的対立に陥ってはならない。国益を見据えた怜悧な視点が必要だ。

 三・一運動は1919年、日本統治下のソウルで起きた。学生や民衆が独立宣言を発表。示威行動は朝鮮全土に広がり、朝鮮総督府が鎮圧した。この運動の位置づけは、保守派の朴槿恵政権から進歩派とされる文政権になって、大きく変わった。

 最大の違いは、建国の時期に関わるものだ。戦後の大韓民国誕生(1948年)を建国とするのがそれまでの常識だが、文政権は、独立運動を受けた上海での「臨時政府樹立」(19年4月)を現国家の始まり、とみなす。この理屈によると、以降の日本統治はすべて「不法」となる。

 元徴用工訴訟の韓国最高裁判決でも、「植民地支配に直結した不法行為だから、慰謝料を出すべきだ」との論理が採られ、個人の損害賠償請求権は日韓協定の対象外としている。

 文大統領は、三・一を前に独立運動家の記念館で閣議を開き祝賀ムードを演出。独立運動について「私たちの誇らしい歴史であり、今日の韓国をつくる根っことなった」と自らの歴史観を表明した。

 その前には、伊藤博文・初代韓国統監を暗殺した安重根の墓を参拝している。

 100周年を前に、独立運動家を英雄視する映画やテレビドラマが次々と放映されており、対日感情の動向も楽観できない。「登場人物の描き方が日本を美化している」との抗議で、修正を迫られたドラマもあった。

 韓国からの訪日客は昨年753万9千人。中国に続く2位で、人口を加味すれば、実質トップだ。日本でも根強い韓流ブームが続き、若い世代を中心に、互いの好感度も上昇傾向にある。そこに冷水を浴びせる政治対立である。

 日本でも今春は、皇室の代替わりや改元などの祝賀行事や式典が相次ぐ。互いの国民感情に火が付くような事態は避けたい。

 レーザー照射問題のような、軍事的な面で偶発的な出来事が起きないか、気掛かりだ。安全保障上の不信感が生まれると修復は難しい。