たびたび、といっても2回しかない。しかし、奈良公園(奈良市)に出掛けた回数を分母にとれば、かなりの確率で遭遇したことにはなる。被害者は、いずれも同行の者である

 一度は学生の時。芝生で弁当を食べていたら、よせばいいのに友人が、何かをやるそぶりをして、寄ってきたシカをからかった。シカは直後、無表情のまま、友人が手にしていた弁当を、前足ではたき落とした

 もう一度は興福寺だったか。幼稚園の息子が、しゃがんでシカにせんべいをやっていた時。別のシカが猛然と突進してきて体当たり。息子を吹っ飛ばし、平然と歩き去った

 国の天然記念物「奈良のシカ」。神の使いは今も短気らしい。昨年度、シカが起こした人身事故は200件と過去最多になった。被害者の約8割は外国人。けが人には重傷者も

 唐突ではあるが、憲法14条が頭をよぎるのである。<すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない>

 片や傷害犯でも天然記念物、片や駆除対象の有害鳥獣。人であったら、生まれた所が違うだけで、こんな差別が許されるのか、と憤るシカが全国にいそうだ。でもね、気休めにもなるまいが、残念ながら人であっても、いまだに差別と闘っているんだよ。