かつて人間にも、共食いの時代があったという。互いが牛に見え、間違えて親兄弟でも食い合いをしたのだという。気が付いて後悔しても、後の祭り。そんな事態が続いていた

 こんな所は嫌だ、と一人の男が旅に出た。ある時、ある国の年寄りから、いい知恵を授かった。ネギを食べると人が人に、牛が牛に見える、と。男はとって返し、故郷にネギの種をまいた。直後に殺された。人食いの犠牲になったのである

 それでもネギはすくすく育った。口にした人々は、ようやく人が人として見えるようになった。<ネギをうえた人はだれからも礼をいわれません。けれども、その人の真心は、いつまでも生きていて、大ぜいの人をしあわせにしました>朝鮮民話選「ネギをうえた人」(岩波少年文庫)

 かつて他国が、自国の繁栄の材料にしか見えない時代があった。日本も朝鮮半島を事実上の植民地とし、住民の抵抗を力で押さえつけた。反旗を翻したのが1919年の三・一独立運動だ

 100年を機に、文在寅大統領は反日の機運を最大限に盛り上げて、政権の追い風としている。日韓関係は悪化の一途ともいわれる

 その実、訪日客は多く、日本の韓流ブームも底堅い。少なくとも私たちは、人が人として見える世界に生きている。災厄の源泉は政治にあるのでは、とも思えてくるのだ。