地震や津波、豪雨といった大規模災害が起きるたび、避難後のストレスや過労、持病の悪化などで亡くなる「災害関連死」の課題が指摘されてきた。

 ところが政府は、東日本大震災など一部を除いて災害ごとに関連死の数すら把握していないのが実情だ。

 「平成」以降に発生した災害で、関連死と認定された人は5千人近くに上るとの報道もある。この数だけでも大規模災害に相当する極めて深刻な事態だ。

 2016年に起きた熊本地震では、建物の下敷きになるなどして亡くなった直接死の4倍を超える218人が関連死と認定された。

 災害関連死は、1995年の阪神大震災から確認されるようになり、既に20年以上が経過している。にもかかわらず、事態に改善が見られないのは一体どうしたことか。

 発生が懸念される南海トラフ巨大地震では、膨大な数の被災者が長期の避難生活を強いられる。そうした中で関連死をいかに防ぐかは、それぞれの自治体の減災に向けた最重要課題だ。

 対応次第で防ぐことができる死を、これ以上増やしてはならない。政府は、災害関連死ゼロに向けた体制を早急に整えるべきだ。

 災害関連死は、遺族の申請を受けて市町村が設けた審査委員会が可否を判断する。認められると、最大で500万円の弔慰金が支給される。

 しかし、遺族が制度を知らずに申請していない事例も少なくないという。制度がしっかりと周知できていれば、災害関連死の数はさらに増えている可能性がある。

 問題なのは、災害関連死を認定する際の統一基準が設けられていないことだ。このため被災自治体は、認定の基準づくりから実務を始めなければならない。

 ある自治体では災害関連死と認められ、他の自治体では認められないといった不平等が生じては元も子もない。早期の統一基準づくりは政府の責務ではないか。

 遺族から申請を受ける自治体には、関連死に至った原因を究明し、再発防止策を講じる上で重要な情報が寄せられている。それらの事例を集約し、実効性のある対策を示すのも政府の役割だろう。

 被災後の偏った食事や慣れない環境で疲労がたまると、健康な人でも体調を崩しやすい。高齢者ら災害弱者の「心のケア」体制の充実は関連死を防ぐ上で欠かせない。

 避難所のベッド、トイレ、食事面の栄養管理を改善すれば、災害関連死を劇的に減らせるとアドバイスする専門家もいる。県内の自治体も、関連死ゼロを減災対策の柱に据え、独自の取り組みを加速させてほしい。

 その際に大切なのは、行政と住民が一緒に避難所づくりのルールを定め、訓練を通じて共有することで、災害関連死を減らす備えを万全にしていくことだ。