英国のメイ首相が、29日に迫った欧州連合(EU)からの離脱の延期を容認する姿勢に転じた。離脱延期の期限について「6月末を超えない短期間」を想定している。

 EUとの離脱合意案はいまだに、英国議会での承認を得られていない。「合意なき離脱」に踏み切れば、英国とEUの物流、経済は混乱し、日本など外国企業の活動にも大きな影響を及ぼすのは避けられない。

 メイ氏は英国の未来のために熟考し、収束の道を改めて探ってもらいたい。

 英下院が離脱合意案を大差で否決したのは1月だった。 英領北アイルランドへの配慮から、英国が離脱した後も、EUの関税圏に実質的に残留する選択肢が盛り込まれていたためだ。EUとの決別を望む与党保守党の強硬派を中心に拒否反応が強い。

 今後の焦点は、メイ氏が12日までに示すとした修正合意案の下院採決である。離脱合意案が否決された場合、メイ氏は13日までに行う採決で「合意なき離脱」の是非を諮り、14日までに延期するかどうかを問う構えだ。

 延期は英国以外のEU加盟27カ国の了承も必要だが、短期間の延期なら認められる見通しだ。

 メイ氏は延期は一度きりだと念押ししており、再延長は不可能との見方が強い。5月下旬にある欧州議会選挙に英国は参加しない方針だ。新議員は7月に活動を開始する。再延長すれば、英国がEU加盟国でありながら、欧州議会に議席を持たない異常事態になるからだ。

 とはいえ短期間で、下院とEUの理解を得るのは容易ではなかろう。国内外に、延期は問題を先送りするだけだとの批判があるのも当然だ。

 それでも、半世紀近いEUとの関係を一気に断つよりはベターな選択だと言えるのではないか。

 メイ氏の延期容認を与党穏健派議員は歓迎し、英経済界からは安堵の声が上がった。英商工会議所は合意なき離脱の回避が「最優先事項」だと強調した。

 英大手世論調査会社の調査によると、英国民の43%が延期を支持し、38%が反対している。世論が割れる状況で、離脱を急ぐ必要はあるまい。

 最大野党の労働党は2度目の国民投票も視野に入れている。英国民も議会も、英国が置かれた現在の状況を、冷静に見詰め直してはどうか。

 このところ英国から、企業活動の拠点を他のEU加盟国に移す動きが顕在化している。さらに、企業の英国離れを加速させてよいはずはないだろう。

 日本は、英国がEUを離脱すれば適用できなくなる日本とEUの経済連携協定(EPA)などの代替措置についても検討を始める。

 依然として「合意なき離脱」の可能性は残っており、英国との貿易や物流が滞らないよう、手だてを尽くすことが大切である。

 <2019・3・4>