領有権を争うカシミール地方でのテロをきっかけに、ともに核保有国であるインドとパキスタンの対立が緊迫化している。空軍機を撃墜し合う事態にまで発展しており、予断を許さない状況だ。

 カシミール地方では、日常的にインドへのテロ攻撃などが発生している。イスラム過激派の一部がパキスタン軍の支援を受けているとされ、インドはパキスタンに対して実効性のあるテロ対策を求めているが、パキスタンは応じていない。

 今回の衝突は長年の根深い対立が原因だ。両国はこれ以上事態がエスカレートしないよう自制を保ち、早期解決を図ってもらいたい。

 テロは先月14日、カシミール地方のインド側で発生した。イスラム過激派がインド治安部隊のバスを襲撃、隊員40人が死亡した。

 報復としてインド空軍は26日、カシミール地方の実効支配線(停戦ライン)を越え、パキスタン北東部の過激派の訓練施設を攻撃した。インド軍機によるパキスタン領での攻撃は、1971年の第3次印パ戦争以来という。

 パキスタン軍もすぐさま反撃。実効支配線周辺に戦闘機を展開し、インド軍機2機を撃墜、脱出した操縦士1人を拘束した。その後、操縦士を解放したものの攻撃の応酬はやむ様子がなく、長期化する恐れも出ている。

 緊張を高めている要因の一つには、両国首脳が抱える国内的な事情もある。

 パキスタンのカーン首相は昨年7月の下院選で勝利した際、軍の支援を受けたとされ、軍部の意向を軽視できない立場にある。操縦士を解放し、「和平への意思表示」をアピールするが、テロ対策を求める国際社会の冷ややかな視線をそらす狙いではないか、との見方があるほどだ。

 一方、インドでは5月にも総選挙が予定され、モディ首相は与党インド人民党の党勢に陰りが見えることから、パキスタンへの強硬な態度を示すことで支持固めを図る考えだという。

 パキスタン政府は「総選挙前という自国の事情で、地域の平和と安定を重大な危機にさらした」と非難し、インド政府は空爆はあくまで対テロ作戦であることを主張するなど、双方とも対決姿勢を崩そうとしていない。

 報道によると、軍事衝突はここにきて沈静化の兆しも見えるが依然、厳戒態勢にあるという。

 両国では既に数千人が避難し、住民の犠牲も相次いでいるほか、上空を飛行する航空便の運休やルート変更などの混乱も起きている。

 衝突が拡大すれば、南アジアはもとより、世界中が脅威にさらされることになる。

 米国や中国は対立激化を憂慮し、対話を通じた問題解決を促しているが、双方ともかたくなだ。互いの不信感を取り除き、どう妥協点を見いだすか。国際社会が結束して収拾に当たる必要がある。