伝説のマラソンランナー金栗四三が、ようやく五輪の舞台、スウェーデンはストックホルムに足を踏み入れ、NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」も、いよいよ序盤のハイライトを迎える

 スポーツといわれるものの始まった明治期から、1964年の東京五輪までの裏面史を描くドラマで、中村勘九郎さんの演じる金栗は前半の主人公だ 時は1912年、第5回大会。マラソンは7月14日。30日には大正に改元されるから明治も45年、最後の年である。短距離の三島弥彦とともに、日本人として初めて五輪に出場した

 派遣を主導したのは、講道館柔道の創始者嘉納治五郎。ドラマは喜劇調ではあるけれど、だからなおさら、日本スポーツ界の先駆者が背負った責任と緊張感が伝わってくる

 五輪での活躍ぶりはよく知られてはいるが放送前にすべて明かすこともないだろう。作家佐山和夫さんの「金栗四三」(潮出版社)によると、翌日の日記にはこうあるそうだ。「失敗は成功の基にして、また他日その恥をすすぐの時ある。人笑わば笑え」

 その後も嘉納の言葉「黎明の鐘となれ」を守り、欧米の選手に肩を並べる競技者の育成に全力を傾けた。83年11月13日没。佐山さんは書いている。「九二年の見事な人生だった」。金栗の偉業を、余すところなく伝える一文である。