戦後70年、大きな節目となる年が明けた。
 
 日本は時代の曲がり角にさしかかった。あの戦争を肌で知る人が少なくなっている。社会で戦争の記憶が遠ざかれば、戦争が近づく。そんな危惧がある。
 
 戦後築き上げた「平和国家」を変質させかねない安倍晋三首相の政権運営をみると、杞憂(きゆう)とも言い切れなくなったのではないか。日本人310万人、アジア各国で2千万人が亡くなった惨禍を振り返り、あらためて平和の尊さをかみしめて、不戦を固く誓いたい。
 
 「国のかたち」を変える動きが昨年相次いだ。一つは、徳島県出身の三木武夫元首相も制度整備に意を尽くし、半世紀近く国是とされた武器輸出三原則である。与党協議だけで撤廃され、武器輸出を原則的に容認する「防衛装備移転三原則」が閣議決定された。各地の紛争に日本が間接的に加担する事態も懸念される。
 
 同盟を結ぶ米国への協力という意味で軌を一にするのが集団的自衛権の行使容認だ。歴代内閣が踏襲してきた「憲法9条によって行使できない」とする解釈の変更が閣議決定された。改正手続きを経ずに憲法を骨抜きにする暴挙には異を唱える。
 
 関連する安全保障法案が通常国会に提案される。自衛隊が米国の戦争に巻き込まれないようにしなければならない。
 
 先月施行された特定秘密保護法も、民主主義の根幹を揺るがす恐れが強い。国民の「知る権利」や「報道の自由」が損なわれないよう、廃止か大幅修正を粘り強く求めたい。
  
 衆院で与党が3分の2を維持したことで、安倍首相の悲願で自民党の党是でもある憲法改正が動き出す。参院の与党議席は3分の2に届いていないが、野党の改憲派議員を含めると、衆参での発議が視野に入る。
 
 最大の焦点は9条の改正である。自民党が2012年に発表した憲法改正草案では、戦争放棄は維持しつつも「自衛権の発動を妨げない」と明記。国防軍を設置するとも記している。
 
 現憲法は過去の反省に立ち、武力行使に歯止めをかけてきた。それを変えれば、どうなるか。再び戦争への道を歩む恐れはないのか。
 
 改憲を強く警戒しているのは、日本に侵略や植民地統治を受けた中国や韓国である。安倍首相の歴史認識も相まって「軍国主義の復活」と受け取られかねない。沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入など中国の力による挑発や、韓国の竹島占拠は断じて認められない。両国による受け入れ難い主張もある。
 
 それでも、歩み寄る知恵と努力は不可欠だ。歴史を直視して過去を若い世代にきちんと伝え、平和な未来を紡ぐことが重要である。それは政治家ばかりの役割ではなかろう。われわれ国民も、経済関係や民間交流の深化で絆を強められる。偏狭なナショナリズムで対立する構図は変えなければならない。
 
 日本と同様に戦争加害国で、ポーランドなど被害国と過去を克服したドイツに学ぶことは多い。大統領や首相が節目、節目に謝罪し、自国に不都合な歴史も修正しようとはしなかった。
 
 アウシュビッツ強制収容所解放60周年(05年)の追悼行事でシュレーダー首相が行った演説の言葉を引く。「歴史を忘れるという誘惑は大きいが、われわれは誘惑に負けない」
 
 安全保障のためには防衛力も必要だが、安倍政権は近隣諸国と友好関係を築く外交をもっと重視すべきである。
 
 徳島にとっても、飛躍の成否がかかった節目の年となる。
 
 夢の架け橋といわれた大鳴門橋が開通30年を迎える。近く、四国横断道・鳴門ジャンクション-徳島インターチェンジ間が開通し、神戸淡路鳴門自動車道と徳島自動車道がつながる。県都が大阪や神戸と高速道で直結し、徳島が飛躍するチャンスである。行政や関係者は交流拡大へ知恵を絞ることが大切だ。
 
 昨年末の臨時国会で地方創生関連2法が成立した。具体的な施策を盛り込んだ「まち・ひと・しごと創生総合戦略」も閣議決定された。企業の地方移転、地方への移住促進などを盛り込んだ。徳島県は人口減少、少子高齢化の進行が深刻で、対策が急務である。総合戦略を看板倒れにせず、実効性を持たせなければならない。
 
 再生へ県や市町村の熱意が最も大切なのは言うまでもない。飯泉嘉門知事も指摘するように、地域に潜在する資源に気づき、磨き、絵に描いた餅ではなく、食べられる餅にすべきだ。
 
 各自治体は、全国に知られる神山町や上勝町も参考にし、独自の意欲的な地方版総合戦略をまとめたい。県も後押しをして、みんなで新たな「徳島のかたち」を創る必要がある。
 
 今年は地方選の多い年だ。知事選や県議選のほかに、5市町長選と12の市町村議選がある。それぞれの立候補者は、地域をもり立てるさまざまなアイデアを示してほしい。
 
 徳島新聞社は徳島大学と昨年末、連携協定を結んだ。互いの人的・物的資源やノウハウを生かし、地域活性化に関する人材育成などに取り組む。徳島の地域力を高めるため、力を尽くそうと考える。
 
 急がなければならないのが防災力の強化だ。次の南海トラフ地震まで刻々と時計の針は進んでいる。温暖化などにより、昨年は台風、水害、積雪の大きな被害に見舞われた。その教訓を生かし、備えを確かにしたい。