会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が、ついに保釈された。検察側は保釈決定を不服として準抗告したが、東京地裁が退けた。

 昨年11月に逮捕されて以降、ゴーン被告の身柄拘束は108日に及んだ。問われている罪状は重いものの、長期の勾留には国内外で批判が高まっていた。

 長く閉じ込め、尋問を繰り返す「人質司法」は冤罪の温床にもなる。これを機に、裁判所は保釈の可否判断に当たり、より柔軟な姿勢で臨むよう求めたい。検察も、身柄拘束を前提とした捜査手法を見直すべきである。

 ゴーン被告の保釈請求は、今回で3回目だった。却下された前回までと違うのは、弁護側が具体的な保釈条件を提示したことだ。

 住居の出入り口に監視カメラを設置することや、携帯電話の使用制限などのほか、パソコンを使う際は平日に弁護人事務所に行くといった措置である。

 これらにより、東京地裁は証拠隠滅や逃亡を防げると判断したのだろう。

 被告が全面的に否認している上、争点を絞り込む公判前整理手続きが始まっていない段階での保釈はまれであり、画期的とも評価できる。

 しかし、カメラによる行動の監視などは人権侵害になる恐れもある。厳しい保釈条件は、長期拘束が常態化している日本の刑事司法の実態を浮き彫りにしたとも言えよう。

 ただ、裁判所の対応に変化が見えるのも確かだ。

 昨年12月、検察側が出した勾留延長請求を東京地裁が退けた。ゴーン被告は直後に再逮捕されたが、同月には、共犯として起訴された前代表取締役グレゴリー・ケリー被告が、否認のまま保釈を認められている。

 全国の地裁が否認事件で初公判前に保釈を許可した割合は、2016年時点で8・9%と少ないものの、最近は増えつつあるという。推定無罪の原則に立ち、その流れを強めてほしい。

 ゴーン被告は無実を主張し、罪状は無意味で根拠がないと訴えている。

 起訴内容は、自らの役員報酬を実際より少なく記載した有価証券報告書を提出したことである。私的な投資で生じた約18億5千万円の評価損を日産に付け替えたり、サウジアラビア人実業家側に約12億8400万円を子会社から入金させたりしたことでも起訴されている。

 事実なら、地位を利用して日産を私物化していたことになる。「無罪請負人」の異名を持つ弁護人を付けたゴーン被告が公判でどう反論していくのか、行方が注目される。

 被告に権力を集中させ、独裁を許した日産の責任も重い。有価証券報告書の虚偽記載で、法人として起訴されてもいる。信頼の回復へ、早期に企業統治改革を図らなければならない。