「知識量から、活用力や思考力を評価する試験に」。その方向性は分かるが、果たして公平な大学入試ができるのか疑問だ。実現へ首をかしげたくなる点も少なくない。
 
 中教審の大学入試改革案である。答申は現行制度を「知識を1点刻みで問う試験で、点数による客観性の確保を過度に重視している」と批判し、改革の必要性を訴える。
 
 改革案では、大学入試センター試験を衣替えし2020年度から「大学入学希望者学力評価テスト」を導入する。複数科目を組み合わせた「合教科・科目型」の問題も出題し、知識を活用して課題を発見し、解決する力をみる。
 
 新たに記述式の解答も導入し、成績は点数ではなく、段階別に示すという。
 
 1979年に共通1次試験が導入されて以来の大改革である。だが、課題も多い。センター試験並みなら55万人以上の受験生を対象に、記述式の採点をするのは困難だ。
 
 各大学の個別試験も大きく変わる。面接や集団討論で人物を多面的に評価する方向に改め、部活動などの記録も含めて合否を判定。ペーパーテストを行う場合も記述式や論述式とし、点数のみでの選抜をやめる。
 
 だが、大学ごとに数千人、数万人いる受験生を、公平、丁寧に面接したり、文章を読んで客観的に判定したりするのは容易ではあるまい。筑波大の阿江通良副学長は「主体性などは30分の面接では分からない。数日かけても難しい」と言う。
 
 受験生の一生を左右しかねない大学入試には、何よりも公正な合否判定が必要だ。
 
 学力評価テストは年に複数回行い、受験生は成績の良いものを採用できる。一発勝負を回避する措置だが、入試が前倒しされれば、準備が進む私立高が有利にならないか。
 
 学力到達度をみる「高校基礎学力テスト」も19年度から導入される。国語などの必修科目が対象で、高校2、3年生が年に複数回受ける。就職時の学力証明や、推薦入試などの参考資料に活用できるが、効果は未知数だ。
 
 新制度の入試は現在の小学6年生から対象になる。文部科学省は近く専門家会議を設置し、制度設計に入る。
 
 拙速は慎み、実現が可能かどうかも含めて慎重に検討すべきである。
 
 そもそも、受験生を「多様な方法」で評価するために、なぜ画一的な全国統一試験を課さなければならないのか。
 
 78年春までの国立1期、2期の旧制度では統一試験がなく、各大学が特色ある問題を出題し、受験生も知恵を絞り、対策を立てて受験した。それで特段の不都合や不公平感があっただろうか。
 
 近年、ペーパーテストを課さないAO入試などで入学する学生の学力低下が指摘されている。「数学が分からない経済学部生」らの対応に苦慮する大学も多いとされる。
 
 文科省が過去に全国の国公私立大を対象に実施した調査では、高校レベルの補習を実施するなど、新入生の学力不足に配慮する措置を取る大学は全体の65%に上った。
 
 新制度の入試で大学内の学力格差が一層拡大し、教育や研究に支障が生じるのでは何のための改革か分からない。
 
 問題点を洗い出して、公正に人物と入試成績を評価し、大学教育の質を高める制度にしてもらいたい。