自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法を制定する方針を政府、自民党が固めた。

 米軍や多国籍軍への後方支援を想定し、任務拡大や迅速な派遣を目指すという。

 地域紛争や内戦の激化、大規模テロの増加など、国際情勢の変化に応じて、日本が相応の役割を果たさなければならないのは言うまでもない。

 しかし、恒久法としては「紛争当事者間の停戦合意」など、自衛隊の参加5原則を厳格に定めた国連平和維持活動(PKO)協力法がある。それで対応できない場合に、時限法の特別措置法を作って自衛隊を派遣してきた。

 その都度、国会で派遣の是非や任務などを審議することが、一定の歯止めになってきたといえる。現状で大きな支障もないのに、国会の議論を不要とする恒久法を作る必要が果たしてあるのか。

 安倍政権は、集団的自衛権行使を認める安全保障関連法案と併せて、今月召集される予定の通常国会に提出したい意向だ。

 自衛隊の活動地域と任務の拡大は、安保法制の整備と同時に進められる日米防衛協力指針(ガイドライン)の再改定でも、打ち出す方向になっている。

 そうした動きを考え合わせると、恒久法の制定は、国際紛争を解決する手段としての武力行使を禁じた憲法9条を形骸化させかねず、問題が多過ぎる。

 懸念されるのは、自衛隊の海外派遣に歯止めがかからなくなることだ。

 安倍政権は昨年7月、集団的自衛権の行使容認とともに、他国軍への後方支援の活動範囲を広げる方針を閣議決定している。

 他国の武力行使に自衛隊の支援が密接に関与した場合、憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」に当たる恐れが生じる。2003年制定のイラク復興支援特措法が、自衛隊の活動を、戦闘が起きる恐れがない「非戦闘地域」に限定したのはそのためだ。

 ところが、昨年の閣議決定は「現に戦闘行為が行われている現場(戦場)以外での補給や輸送は『武力行使との一体化』にならない」と規定し、非戦闘地域の概念を撤廃した。

 後方支援を拡大する方針も決めており、これを受けて政府内には、従来禁じてきた武器・弾薬の提供を可能とする法整備の動きがある。

 さらに、離れた場所にいる他国部隊や国連要員などを助ける「駆け付け警護」ができるよう、武器使用基準の緩和方針も決定した。

 これらが恒久法に反映されれば、自衛隊が海外活動で戦闘行為に巻き込まれる危険が格段に高まるだろう。

 恒久法をめぐっては、イラク特措法ができた03年に、「対症療法ではもう間に合わない」といった理由で制定を目指す動きがあった。その後、06年と08年にも政府、自民党内で法整備の機運が高まった。

 08年の動きの背景には、新テロ対策特措法の期限切れを控えて、インド洋での海上自衛隊の給油活動を継続させる狙いがあった。だが、連立与党を組む公明党が慎重姿勢を崩さず、立ち消えになった経緯がある。

 今回も公明党内には慎重論があり、難色を示しているようだが、当然だろう。与党協議の行方に注目したい。