断じて許せない凶行だ。民主主義の根幹である「表現の自由」に対するテロに、世界は結束して立ち向かうべきである。

 パリ中心部の風刺専門週刊紙シャルリエブド本社で、覆面をした複数の男が銃を乱射し、編集長や風刺画家らと警官2人の計12人を殺害して逃走した。他にも編集幹部ら8人が重軽傷を負っており、死者は増える恐れもある。

 容疑者はパリか近郊出身の3人で、2人は30代のアルジェリア系フランス人兄弟、もう1人は少年だ。弟はイラクのイスラム過激派と関わっていた。同紙がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画などを掲載したことへの報復の可能性が高い。

 編集幹部や風刺画家らによる定例の編集会議が開かれていた部屋に押し入っており、会議開催の日時や場所の情報を入手して周到に計画された犯行とみられる。

 自動小銃カラシニコフで武装していた。治安部隊との銃撃戦の後、車で素早く逃走しており、訓練されたテロリストに違いあるまい。

 「預言者の敵だ」「神は偉大なり」と叫びながら銃を連射したという。倒れた警官にはとどめを刺した。その残忍さに驚く。

 イラン外務省の報道官の声明にもあるように、テロ行為がイスラムの規範に反するのは明らかである。フランス最大のイスラム教組織も非難している。

 少年は出頭し、残る2人も捜査当局に追い詰められた。犯行の動機や、イスラム過激派とのつながりなど、全容解明を急いでもらいたい。

 同紙は、過去に預言者ムハンマドを題材とした風刺画などでたびたび物議を醸し、2011年には火炎瓶を投げ込まれて事務所が全焼したことがある。それでも1年後に、フランス政府の自粛要請を振り切ってムハンマドの風刺画掲載に踏み切った。

 表現、言論の自由を標的にしたテロに、世界が憤っている。フランスのオランド大統領は「言論の自由そのものである新聞に対する蛮行だ」、英国のキャメロン首相は「吐き気を催す殺人だ」と、怒りをあらわにした。

 安倍晋三首相も非難するメッセージをオランド大統領に伝えたが、当然のことだ。

 パリ市民約3万5千人が同紙本社近くの広場に集まり、ペンを掲げて「私たちは恐れない」と、表現の自由を貫いた編集者たちに連帯の意思を表明した。犠牲者の追悼集会も各地で開かれた。

 自由と民主主義は、われわれが最も大切にしていることであり、パリ市民と思いは同じだ。

 懸念されるのは、この事件で宗教をめぐる敵対と衝突が激化することだ。世界のイスラム教徒が敵視されることがあってはならない。

 宗教的な対立は01年9月の米中枢同時テロ以来、顕著になった。オランダではイスラム社会の女性虐待を描いた映画の監督が暗殺され、イスラム教徒移民の排斥を訴える右翼政党が勢力を伸ばした。

 一方、ネットでムハンマドを侮辱的に描いた映像が投稿されたのをきっかけに、世界各地のイスラム教徒が抗議デモをして、治安部隊と衝突するなどしている。

 憎悪と暴力の連鎖を断ち切り、悲劇に終止符を打たなければならない。