徳島県南部で米軍機とみられる航空機の低空飛行が、昨年11月末から急増している。

 本県は紀伊半島から愛媛に至る「オレンジルート」と呼ばれる低空飛行訓練ルートの一部になっており、県南地域の住民は長年、騒音に悩まされている。

 1994年には、高知県の早明浦ダム上流でジェット機が墜落する事故が起きており、本県でも懸念は拭い去れない。

 日米両政府は、住民の不安を重く受け止めなければならない。

 県によると、低空飛行は8月末から3カ月間、途絶えていたが、昨年11月24日から目撃が相次ぐようになった。本年度、目撃情報が寄せられた日数は昨日までに16日を数えるが、うち13日は11月24日以降に集中している。年が明けて7日からは3日連続だ。

 地域では牟岐、海陽、那賀の3町からの情報が大半で、12月3日には三好市でも目撃があった。

 1日に何度も飛来することも多く、目撃した住民たちは「ごう音で耳が痛い」「パイロットの顔が見えるほど低く飛んでいる」と憤っている。

 県は昨年4月から実態把握の一環として、牟岐、海陽両町役場屋上で飛来時の騒音を測定している。

 これまでの最大音量は先月12日に海陽町で記録した94・9デシベル。電車が通るガード下が100デシベルと言われており、相当な音量だ。飛来地点に近い場所では、耐え難いレベルになるだろう。

 日米政府の取り決めで、最低高度を住宅密集地では300メートル、それ以外は150メートルとしているが、目撃証言からすると、基準に違反している可能性がある。

 飛来急増を受けて県は昨年末、中国四国防衛局(広島市)に担当者を派遣し、低空飛行訓練の中止を米軍に申し入れるよう要請した。

 防衛局は県の要請文を英訳し、7日に米軍岩国基地に提出したものの、米軍から回答はなかった。

 軍事に関する問題とはいえ、県の要請に返答さえしない姿勢はどうしたことか。住民の不信感を募らせるばかりで、両国の利益にならないのは明らかだ。

 県は、防衛局に訓練情報を把握して事前に連絡してほしいとも求めた。だが、米軍は訓練に関する情報をほとんど提供しないので、防衛局もお手上げというのが実情だ。

 日本国内で訓練をしている以上、米軍も説明責任を果たすべきである。

 日本政府は日米安全保障条約に基づき、低空飛行訓練の実施を認める立場である。

 日米安保は重要だが、騒音や事故への不安から国民を守ることも大切だ。政府はより安全で納得性の高い訓練の在り方を追求し、米軍と粘り強く交渉する必要がある。

 県も取り組みを強めたい。訓練ルートは全国で少なくとも8あると言われ、高知県内への飛来も同様に増えている。高知県など訓練に悩む他の自治体と連携を探ってはどうか。

 低空飛行訓練の問題が浮上すると、県は外務省や防衛省に要請する。外交や安全保障は国の問題だという認識からだが、隔靴掻痒の感もある。

 知事や県議会議長が、米大使館や在日米軍に住民の不安を直接伝えてもいいのではないか。