政府は、一般会計総額が過去最大の96兆3400億円となる新年度予算案を閣議決定した。
 
 地方創生や子育て支援、安全保障などを重点分野として、安倍晋三首相は「経済再生と財政健全化を同時に達成するのに資する予算だ」と強調した。
 
 果たして、そうだろうか。
 
 確かに、基礎的財政収支の赤字幅は本年度当初予算から4兆円以上、圧縮した。
 しかし、赤字幅が改善したといっても、予算の38%を借金に頼っていることを忘れてはならない。
 
 欧米の主要国と比べると飛び抜けて高い割合であり、1千兆円を超えた国の借金残高が膨らみ続ける状況に何ら変わりはない。
 
 税収の伸びはマイナス成長からの回復を前提にしたもので、景気次第では想定通りにならない恐れもある。
 
 高齢化に伴って社会保障費は毎年1兆円規模で増えている。しかし、それを賄う安定財源のめどは立っていない。
 
 財源が厳しいにもかかわらず、過去最大に膨らんだ歳出総額が、財政再建を後回しにしている安倍政権の姿勢を如実に物語っているといえる。
 
 消費税再増税を延期したことを受けて、米格付け会社が日本国債の格付けを引き下げた。こうした動きが一部にとどまっている間に、政府は借金を着実に減らしていく道筋を内外に示す必要がある。
 
 政府は夏までに新たな財政再建計画をつくるが、強い危機感を持って社会保障の効率化など歳出削減に取り組まなければならない。
 
 地方創生を前面に打ち出しているのも大きな特徴だ。
 
 歳出に「まち・ひと・しごと創生事業費」を新たに設けて1兆円を計上したほか、自治体が自由に使える一般財源総額も過去最高とし、自治体の取り組みを後押しする姿勢をアピールしている。
 
 昨年末、地方の人口減少に歯止めをかけ、東京の一極集中を是正するための「総合戦略」が閣議決定されたばかりで、新年度はいわば「地方創生元年」である。
 
 地方への予算配分を手厚くするのは当然だろう。地方は、知恵を絞って予算を有効に使いたい。
 
 ただ、財政難の国が地方に対して重点的な予算配分をいつまで続けるかは不透明だ。
 
 手厚い支援があるうちに、地域を元気にする施策を軌道に乗せたい。徳島県や市町村はスピード感を持って取り組んでほしい。
 
 厳しい制約の中、3年連続の増額が認められ、過去最 大の5兆円に迫った防衛費の厚遇ぶりも目を引いている。首相の意向が強く反映されており、安倍政権のカラーが鮮明になったといえる。
 
 一方で、生活に直結する経費は、細かく切り詰められている。
 
 5歳児の「幼児教育無償化」は財源不足で断念した。生活保護費のうち住宅扶助と冬季加算の支給カットも決まった。年金額が少ない人に月最大5千円を支給する措置も、消費税再増税の延期により見送られた。
 
 低所得者への目配りを欠いていると言わざるを得ない。
 
 安倍政権は経済政策・アベノミクスや税制改正でも、富裕層など「勝ち組」を優遇してきた。
 
 格差拡大をこれ以上助長することは許されない。