6434人もの命を奪った阪神大震災は、徳島県内にも被害を及ぼした。

 最も大きかった鳴門市では88棟の家屋が全半壊し、18人が重軽傷を負った。

 タンスの上から飛んできた飾りケースに当たって大けがをした人、激しい揺れに飛び起きて背骨を折った人-。

 その朝の県内の最大震度は4だった。それでも、これだけの被害が出た。

 30年以内に70%の確率で起きるとされる南海トラフ巨大地震の予測では、県内全域が震度6強から7の揺れに見舞われる。

 東日本大震災の発生以来、巨大津波に対する恐怖に気を取られがちだが、建物の耐震化の重要性をあらためて認識する必要がある。

 阪神大震災の後、1981年以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅の耐震診断と耐震改修には、国と県、市町村の補助が受けられるようになった。しかし、いずれもあまり進んでいないのが現状だ。

 費用がかさむことが要因だが、安全には代えられない。簡易な改修や危険な箇所を部分的に補強する方法も普及している。補助制度を上手に使って、着実に耐震性を高めていきたい。

 家具の固定も忘れてはならない。阪神大震災では、倒れた家具の下敷きになって亡くなったり、逃げ遅れたりした人も多かった。

 専用の金具などで固定することができる。寝室の点検はもちろん、普段よく過ごす部屋から家の出入り口までの避難ルートなど、いま一度確認しておきたい。

 南海トラフ地震では、阪神大震災や東日本大震災以上の被害が予想されている。

 県が発表した県内被害想定によると、最悪で死者は3万1300人、全壊・焼失する建物は11万6400棟に達する。死者のうち、8割以上が津波による犠牲者だ。

 県の試算では、地震発生から28分後に美波町日和佐港入り口に9・8メートル、53分後には徳島市マリンピア沖洲東端に5メートルの津波が到達するなど、短時間で大きな津波が押し寄せる。浸水域は、鳴門市から海陽町までの沿岸8市町に北島、藍住両町を合わせた10市町に及ぶ。

 各市町では、避難タワーや高台に上る道の整備、避難ビルの指定などが進んでいる。遅れている避難所の確保や食料備蓄にも、一層力を入れてもらいたい。

 ハード面は行政が中心になるが、何より肝心なのは、強い揺れや、弱くても長い揺れがあったら一刻も早く高い所に逃げることだ。家族で話し合ったり避難訓練を行ったりし、日ごろから防災意識を持っておくことが大切である。

 阪神大震災では、倒れた家からの救出や避難所での助け合いなど、近所の人たちの力が大きかった。地域のつながりも強めていきたい。

 国の中央防災会議は、地震発生後20分以内に全員が避難を開始すれば、死者を最悪の想定から半分程度に減らすことができると推計している。

 県も、建物の耐震化や住民の避難率を高め、家具の固定化や防火対策、津波避難施設の整備を徹底すれば、死者を9割減らせるとの見通しを示している。

 巨大地震は防げなくても、被害を小さくすることはできる。減災への取り組みを着実に進めたい。