水に豊富に含まれ、燃料電池車のエネルギー源となる水素が、次世代エネルギーの主役格として注目されている。
 
 発電の際に二酸化炭素(CO2)を出さず、地球温暖化防止やエネルギー安全保障の面で優れているからだ。
 
 徳島県はきょう、「水素グリッド導入連絡協議会」の初会合を開き、水素エネルギーの供給体制をどう構築するかなどについて、関係者らと検討を始める。
 
 国も新たなエネルギー基本計画で、水素を広く利用する「水素社会」に向けた取り組みの強化を決めているが、地方から声を上げる意義は大きい。課題を一つ一つ克服し、着実に前に進めていきたい。
 
 水素を一気に身近にしたのは、トヨタ自動車が昨年末、世界で初めて一般向けに発売した燃料電池車「MIRAI(ミライ)」である。
 
 水素と酸素の化学反応で発電し、モーターを動かして走る燃料電池車は、水しか排出しないため「究極のエコカー」と呼ばれている。
 
 燃料の水素は3分程度で補給でき、走行距離も約650キロと長い。今年末までの国内販売目標は約400台だったが、発売1カ月で受注が約1500台に達した。
 
 それでも、より多くの人が乗れるようにするには、価格を安くしないといけない。現在720万円余で、国の補助金を受けても520万円程度と、かなり割高だ。
 
 トヨタは普及を後押しするため、約5680件の特許を他の企業に無償提供すると発表した。燃料電池車はホンダが来年3月、日産も2017年の発売を計画している。技術がさらに進展し、価格低下につながるよう期待したい。
 
 燃料補給に使う「水素ステーション」も増やさなければならない。
 
 国は15年度中に全国で計100カ所を確保する目標を掲げているが、現実は予定を含めてまだ40カ所程度で、東京、名古屋、大阪、福岡の大都市圏にとどまっている。
 
 保安上の規制があり、広い用地が要る上、開設費がガソリンスタンドの5倍以上と高いためだ。安全性に十分注意しながら規制緩和を進め、コストを下げる必要がある。
 
 徳島県の連絡協議会は、トヨタ自動車や産業ガス大手の大陽日酸、東亞合成、四国大、経済産業省、県の担当者ら産学官でつくり、水素エネルギーの普及や水素ステーションの設置に向けた具体策を話し合う。
 
 県内では、東亞合成徳島工場が製品の副産物として水素を製造しているほか、大都市圏に比べて、水素ステーションを開設する用地も確保しやすい。
 
 阪神方面からの四国の玄関口であることも利点だ。大阪や神戸から乗り入れてくる燃料電池車に燃料を補給する拠点として、水素ステーションは需要が見込める。
 
 水素は現在、石油や天然ガスから作られているが、将来的には、太陽光など再生可能エネルギーの電気で水を分解して製造する技術が確立するとみられている。その点でも、再生エネを積極的に導入している本県の潜在力は高いといえよう。
 
 県は、県内で水素を作って利用するエネルギーの地産地消を目指すという。強みを生かせば、決して不可能ではなかろう。実現に向け、大いに知恵を絞ってもらいたい。