経団連の榊原定征会長と連合の古賀伸明会長が会談し、今年の春闘が本格化した。 

 経済界は賃上げに努力する姿勢を見せている。焦点は、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)が昨年より高い水準になるかどうかだ。

 経済の好循環を生み出すには、働く人たちの収入を増やし、雇用環境を良くしていかなければならない。

 企業は積極的に対応し、賃上げの流れが強まるよう期待したい。

 会談で、榊原会長は「企業収益を高め、給与の引き上げに向け、最大限の努力をする」と表明した。

 経団連は今年、春闘方針に当たる経営労働政策委員会(経労委)報告で、ベアも「選択肢の一つ」として容認した。6年ぶりにベアを事実上容認した昨年の「ここ数年とは異なる対応も選択肢」とした表現より、一歩踏み込んだ形だ。

 アベノミクスの効果もあって賃金は全体として上がっているが、昨年4月の消費税増税や円安による物価上昇に追い付いていない。

 実質賃金は17カ月連続のマイナスで、それが個人消費を低迷させ、デフレからの脱却を阻んでいる。

 賃上げに向けて、経済界が昨年以上に意欲を示したのは評価したい。

 一方で経労委報告は、連合が昨年の「ベア1%以上」を上回る2%以上を要求したのに対し、「納得性が高いとはいえない」と批判した。

 企業の業績にはばらつきがあり、ベアが難しい業種や業態があるのは確かだ。

 しかし、政府・与党は企業の賃上げを後押しするため、法人税の先行減税を決めている。減税額は2015年度からの2年間で計4200億円になり、恩恵の大半は大企業に回る見通しだ。

 円安の進行で、輸出産業を中心に業績を伸ばしている企業は少なくない。内部留保をため込んでいる企業もあるが、経営努力だけで収益が向上したわけではないだろう。

 好調な企業は、思い切った賃上げで従業員に利益を還元すべきだ。

 重要なのは、徳島県など地方の大半を占めている中小企業に賃上げを波及させることである。

 円安による原材料高などで、中小企業は厳しい経営環境に置かれている。ただ、大企業との賃金格差が広がれば、人手不足にも拍車が掛かりかねない。

 昨年末に政府と経済界、労働団体が開いた「政労使会議」では、下請け企業との取引価格の上昇を促すことで合意した。

 円安の恩恵を受けている大企業が、原材料高に苦しむ中小企業に対し、仕入れ価格の高騰を踏まえた価格設定をしようというものだ。

 各企業が実践するのはもちろん、政府がしっかりと監視する必要がある。

 働く人の4割を占める非正規労働者の賃上げや、正社員化も大きなテーマだ。

 国税庁の12年の調査では、年収200万円以下の人は約1090万人にも上る。経済の好循環をつくり出すには、低所得者の待遇改善が欠かせない。

 連合は今春闘で、中小企業や非正規の労働者への対策に特に力を入れるという。

 賃金の底上げへ、労使が真剣に議論するよう求めたい。