2018年シーズンも引き続き、徳島ヴォルティスのキャプテンを務めることが決まったMF岩尾憲。昨シーズン終了後、「徳島ヴォルティス激闘の軌跡2017」の取材で、キャプテンを務めた経験や感じた課題について語ってくれました。チーム内外からも信頼が厚いヴォルティスのキャプテン。今季も開幕に向けて存在感を発揮しているキャプテンについて、より知ってもらうために詳細を公開します。(取材日はシーズン終了後の2017年11月27日)

2018年もキャプテンを務めるMF岩尾(右)=宮崎市の県総合運動公園ラグビー場

―キャプテンとしての1年を振り返って

リカ(リカルド・ロドリゲス監督)が来てくれて、徳島の伝統だった「堅守速攻」を1度捨てて、全く新しいやり方でトライした年だったので、そういう意味では、リカの手腕も含めて、ものすごくいいチームだったという印象があります。

-キャプテンになることの提案を受けたときの心境は

自分自身、プロサッカー選手をやらせてもらっていて、常に成長していたいという意欲は持ち続けなければいけないと思っているので、そういう意味では、キャプテンをやらせていただくということは自分の成長につながると確信を持っていました。そこから逃げるのではなく、楽な道を選ぶのではなくて、厳しい道を進んでいくことで、自分も一つ階段を上れると思っていましたし、そうすることで上らなければいけないと思っていました。抵抗なくやらせていただこうとの思いで引き受けました。

―山あり、谷ありのシーズンだった。ポイントだった試合などは

ポイントを言い出したら、数が出てきてしまうんですけど。一番は何があってもピッチに立ち続けなければいけないという思いが強かったです。サッカー選手をやっているので、どこか痛い場所を抱えながらというのが普通だとは思いますけど、なかなか人には言えない部分もたくさんありましたし、そうしたことで強くなれたという自負もあるので、ピッチに立ち続けることはずっと思ってました。だからといって、練習がおろそかになってはいいわけではないので、常に自分が持っているものを限りなく、100に近く、100または120、毎練習出すことが重要だとずっと思ってました。僕は今年、周りを見ていろんなことを感じて、いろんなことを言ってきたつもりではありますけど、同時に、周りの選手は僕のことをすごくよく見ていると思うので、そこはすごく意識しながらどういう見られ方をしているのか、どうあらなければいけないかは常に考えていました。

―選手・岩尾憲としての成長は。守備面だけでなくプレスキックを務め、シュートもあった

ボールに関わったときに、相手の位置とか、プレスの早さというか、どこに相手がプレスを掛けに来ているのかとか、僕の場合、本当にボールを奪いに来ているのかというギリギリの判断は今までもトライしてきたとこですけど、そこはより洗練されて、いい判断が、正しい判断ができる中で、技術も伴わないとできないのでそういう意味では、そういうシーンはいままでより多かったと思います。

―シーズン41試合でフル出場、チームで誰よりも長くピッチに立ち続けた

それが下限だと思っている、最低限やらないといけない仕事だと思っていましたし、それは当然簡単なことではなかったんですけど。僕の中では、湘南で一緒に戦った、いま鹿島にいる永木(亮太)選手の影響も大きくて、彼はどこかしら痛めていても試合を放棄することはなくて、必ずピッチに立ち続ける人間で、彼はその後、(日本)代表に行って試合出場も果たしました。そういうところは昔、僕にはなかったところだったので、キャプテンで亮太が出場し続ける、どんなときも、いいときも、悪いときも、コンディションが難しいときも出続ける大事さというか、それが仕事だという振る舞い、言い訳しないというところは、ものすごく僕の中では強烈に印象に残っていて、今年はその学びから僕が振る舞わなければいけない番だなと。彼はそれを3年前ぐらいにやっていたので、3年の差は僕とある気はしてますけど、そういう意識は今年、強かったですね。

―ピッチに立ち続けると同時に、ピッチ外でも苦しいときに対外的な振る舞いも求められた

どのシーンにおいても、後悔しないように行動してきたつもりですし、後悔しないように言葉を選んだつもりです。いろんなシーンで僕が、言葉を求められることがありましたけど、それこそ、やらない後悔より、やって後悔したいと思ったので。それはメディアさんやサポーターに向けてだけではなくて、選手間でもありましたし、監督に物申したこともありました。それは僕が譲りたくないというところは主張してきたつもりです。それが正しいかどうかは僕にも分かりませんけど。ただ、僕が責められるにしても、何をするにしても自分が行動した上での結果なら受け入れられるので。選手とけんかすることもありましたし、一方的に僕が発言したこともありました。後悔しない、トライというのは、もっとできたのかなというところもありましたけど、感じたすべてをやってきたつもりなので、それが、良く取るか、悪く取るかは、もう感じた方にお任せしますという感じです。

―2017年のシーズンを踏まえ、新シーズンへどう成長したいのか。次の段階にどう進みたいか

チームも、クラブも、選手個人も、さっきも言いましたけど、1年1年、1日1日、成長しなければいけない。これは、もう僕の中での一つの信念なので。成長しなければいけない、「それは当たり前でしょう」ということかもしれませんけど、本当に成長するために必要なことはたくさんあって、そういうことを深く考えて練習をする、試合をする。例えば監督の話を聞く、いろんなことを自分で見て感じる、そういうことを当たり前のようにできるっていうことが成長だと思いますし、とかく人間なのでいいときも悪いときもありますけど、そこに左右されずに、自分がどうありたいかということを常に考えるのがプロだと思いますし、それは今年も、来年もその次も選手でいる限り変わらないと思っているので。そういう1年に個人としては、しなければいけない。チームとしてもここから何を学ぶのかが非常に重要で、この最後勝ち点1で、プレーオフに進めなかったという現実を甘く見ないというか、「俺たち(J1に)行けたよね」っていう考え方じゃなく、行けなかったのが事実で、勝ち点1は少しの差ではなくて、天と地との差があることを、選手も、スタッフも、サポーターの方も勘違いすることなく、この1の差はあと少しだったんではないということを、肝に銘じて次に進まないといけないと僕は思っています。

―いいチームだったと各選手から語られた2017年のチーム。岩尾選手にとってどういうチームだったか

至らなかったところも僕の中では明確に見えてますけど、ただ今までキャプテンをやらしてもらったこともなかったので、そういう立場でチームを見させてもらって、僕自身、本当にみんなに助けられたと印象もありますし。僕がチームの心臓としてと、思われがちかもしれませんけど、僕はまったくそう思っていませんし、このチームにはいくつかの心臓があって、その心臓の持ち主がすごくよくやってくれたと思う反面、もう少し機能してくれたらよかったなというところも正直なところあるし、ただ総じて、チームのスタイルだったり、監督の体現したいことっていうのは、みんなそれぞれの立場で一生懸命やったと思うし、そういう意味では決してチームがバラバラではなかったというふうに思っています。

―若い選手に声出しを求めた。伝わったか

声を出すというのはツールの一つで、別に声じゃなくてもいいんですけど。ただ、若いから、経験があまりしてきてないから、というのは、この時代のサッカーは言い訳にならないことをものすごく痛感した1年でしたね。コンディションのところを含めて、個人が安定しない時期がありました。そうなると、ゲームプランが難しくなるということをものすごく感じたので、出ている選手が、一人一人が役割を果たすことの難しさというか、個人スポーツではないので、調子の良し悪しというのは必ずあると思うんですけど、悪いときをどう個人が気付いて、そのときできる最善を尽くせるかどうかということが、かなり勝敗に影響したなと感じています。それは、経験を待っていたのでは、一生掛かっても昇格はできないと僕は思ったので。来年、高校を卒業して3人の選手が入ってくることが決まっていますけど、彼らの経験を待っていたのでは、このチームは絶対J1昇格できない。若いから、経験がないから、こういうとき、自分が調子が悪いときに、とことん悪いと言うようでは、結果を出すことは難しいのかな。ただ、クラブとしてもベテランをそろえるのではなく、若い選手を入れてというのがこのクラブのやり方でもあるので。じゃあ、そこでどうやって結果を出すかというところは、すごく難しいというか、調子の、コンディションの良し悪しにに左右されずに、一人一人がしっかりパフォーマンスを発揮する。発揮できた試合は、3つも4つも、多いときで6つもゴールを生んでいるわけで、そういう試合を常にできるように持っていかなければいけないというのはすごく感じました。

チームワークの考え方の一つですよね。日本人は悪い選手がいたら、そこを他の選手が補ってあげるという考え方をしますけど、一方で、役割を一人一人がしっかりと責任を持って果たすことができたら、それもまたチームワーク。チームのために仕事ができているということなので、僕は前者ではなく、後者であり続けなければ、すごく難しいなという感じを受けました。それができるのが今シーズンの湘南だったなと。