欧州中央銀行(ECB)は国債の買い取りなどで、大量の資金を市中に供給する量的金融緩和を初めて導入する。ユーロ圏がデフレに入るのを阻止するのが狙いだ。

 主要政策金利は過去最低の0・05%という低水準であるため、量的金融緩和に政策の幅を広げた。思い切った対応といえよう。

 量的緩和でユーロ安基調が続けば、ユーロ圏の輸出企業の業績改善のプラスになる。ギリシャ危機などで揺れ続ける欧州経済の安定につながることを期待したい。

 日本や英国に続いて、世界2位の規模の通貨圏のECBが量的緩和に踏み切ることで、金利の低下傾向が世界的に強まるだろう。ユーロ圏の金利が下がればユーロ安が進み、円やドルの相場が上昇する可能性がある。今後の影響を注視しなければならない。

 ユーロ圏の消費者物価指数の上昇率は昨年12月、約5年ぶりにマイナスに転じた。原油安や不況による需要低迷により当面、大幅な上昇は見込めない。物価安を見越して消費や投資が手控えられ、経済がさらに冷え込むという悪循環に陥る懸念が強い。

 量的緩和では、来月から来年9月まで、国債などを軸に毎月600億ユーロ(約8兆円)の資産を買い取る。

 購入するのはユーロ圏各国の国債が中心だ。ドイツが最後まで反対したギリシャ国債についても、財政再建などを条件に購入対象とした。

 ドイツは量的緩和そのものに反対で、ユーロ圏はしこりを残したまま、デフレの脅威と闘うことになる。

 このため、買い取った国債の値下がりなどによる損失の大半を、発行国の中央銀行が負担する仕組みにした。損失負担は各国が約8割で、欧州中銀は2割程度とする。

 他国の国債から発生した損失の負担に抵抗するドイツなどに配慮して、各国の責任を明確にしたのは、公平性を保つ意味で妥当な措置である。

 ECBのドラギ総裁は「中期的な目標である2%弱のインフレ率の達成が見通せるまで実施する」としている。

 量的緩和を推し進めてもデフレから脱却できず、景気回復の足取りが鈍った日本の例もある。ECBはいずれ量的緩和の拡大を迫られるとの観測も浮上している。

 大切なことは、量的緩和で実体経済に好影響を与えることだ。

 銀行の貸出金利の低下に伴い、企業や家庭が借り入れを増やして投資や消費を上向かせることで、新たな需要を喚起する。経済の好循環を実現し、デフレを回避したい。

 労働市場の規制緩和などの経済構造改革を進め、産業競争力を強化することも重要な課題だ。

 警戒しなければならないのは、だぶついた資金が不動産や株式市場に流入し、いたずらに資産価格を膨らませるバブル経済が発生することだ。

 ユーロ圏の資金は原油市場にも流れ込み、原油価格にも影響を与えよう。

 ECBと日銀が金融緩和を続ける一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)が、今年半ばにも利上げするとの観測がある。金融政策の方向性の違いは投機筋の動きを活発化させ、国際金融市場の混乱要因となりかねない。

 日米、ECBをはじめ、各国には、市場の安定に向けた機敏な対処が求められる。