高齢者による交通事故を減らそうと、警察庁は運転免許証更新時に実施している認知機能検査を強化する方針で、通常国会に道交法改正案を提出する。

 認知機能の低下が進めば、安全運転は難しくなる。高速道路の逆走やブレーキとアクセルの踏み間違いなど、認知症の影響が疑われる事故も目立つようになっており、対策が急がれる。

 高齢者自身や周囲の人の安全を考えれば、免許証の審査を厳しくするのはやむを得ないだろう。

 警察庁によると、死亡事故の総数は昨年まで14年連続で減少したが、75歳以上が起こした割合は2003年の5・5%から13年には11・9%に増えている。高齢化が進んでいる本県の場合、状況はより深刻で、13年は75歳以上が39・6%だった。

 年齢層別の免許保有者10万人当たりで、75歳以上の死亡事故は10・8件と75歳未満の約2・5倍にも上る。

 高齢者といえば交通弱者のイメージが強いが、加害者にもなり得ることをあらためて認識しておきたい。

 高齢ドライバーは急増している。03年に約195万人だった75歳以上の免許保有者は13年には約425万人。18年には530万人を突破すると推計されている。

 一方、厚生労働省の推計では、65歳以上の認知症とその予備軍は862万人。県内でも計6万人を数える。交通事故における認知症対策は緊急課題なのだ。

 認知機能検査は3年ごとの更新時に、75歳以上を対象に実施している。改正案では、認知症の疑いがあると判断された場合、医師の診断書の提出を新たに義務付ける。

 これまでは疑いがあるとされても、逆走や信号無視など一定の違反がなければ診断を受ける必要がなかった。改正案では、違反がなくても診断が必要で、結果次第では免許取り消しの対象となる。

 認知機能は急激に低下することもあるため、更新時に疑いがなくても一定の違反をした際には、臨時検査を受けなければならなくなる。

 検査の機会を増やして、早期に認知症ドライバーを見つけられるようにしているのがポイントだ。

 現行制度は09年6月に始まり、本県ではこれまでに18人が認知症と診断され、免許取り消しとなっている。

 免許証の自主返納制度もある。運転に自信がなくなったと感じたら、最寄りの警察署に相談してみよう。家族も高齢者の運転に変化はないか、日頃から注意を払いたい。

 改正案は事故抑止策として効果が期待されるが、公共交通機関が脆弱な本県など地方では自家用車は暮らしに欠かせない。

 免許証を失えば、たちまち買い物や通院など生活に支障を来す高齢者が大勢いる。交通手段の確保は、事故防止と同じぐらい重要だ。

 政府は認知症対策強化に向け、省庁横断の国家戦略「認知症施策推進総合戦略」をまとめた。

 認知症対策は多岐にわたっており、従来の縦割り行政を排して取り組むのは当然だ。

 政府は、高齢者を運転から遠ざけることだけに注力するのではなく、車の運転ができなくなっても不便なく暮らせるような対策も同時に講じるべきである。