保険料を納める現役世代が減る一方で、年金を受け取る高齢者は増えている。年金財政を破綻させず、将来世代の受給を確かなものにするにはどうすればいいのか。

 厚生労働省の社会保障審議会がまとめた年金制度改革に関する報告書は、この問いに一つの答えを示したものだ。

 大きな柱は、年金給付の伸びを抑える仕組みを強めることである。

 年金を受け取っている高齢者には「痛み」となるものの、制度を維持するためにはやむを得ない措置だろう。

 ただ、わずかな年金を頼りに老後の生活を送る人は深刻な影響を受ける。実施するには、低所得者への支援に十分配慮しなければならない。

 給付の伸びを抑制する仕組みは「マクロ経済スライド」と呼ばれる。2004年の制度改革で導入された。

 毎年の年金額は、前年の物価か賃金の上昇率に連動して改定している。だが、少子高齢化が急速に進む中でそれを続けていけば、保険料収入や積立金などで賄い切れなくなり、年金財政は破綻する。

 そこで、年金額の改定率を物価や賃金の伸びよりも1%程度低くすることにした。例えば物価上昇率が2%なら、1%程度に抑える。

 年金財政のバランスがとれるまで続けることになっているが、問題は、物価が下落するデフレ時には適用しない規定があることだ。

 物価の下落に伴って年金を下げ、さらにスライドによる給付抑制で1%程度下げれば、受給者の反発が強まるからである。

 しかし、これでは将来世代が受け取る額が大幅に減ってしまう。実際、制度の導入から14年度までデフレが続き、一度も適用されなかったため、年金財政は一段と厳しくなっている。

 厚労省が昨年公表した年金の財政検証は、経済の低成長が続く場合、現行ルールのままだと72年度まで給付抑制を続ける必要があり、現役世代の収入に対する年金額の割合である「所得代替率」も39・5%に落ち込むとした。

 一方、デフレ下でも適用すれば給付抑制は50年度で終わり、所得代替率も44・5%に食い止められる。

 こうしたことを背景に、報告書は「(抑制は)極力先送りされないよう工夫することが重要」とし、デフレ下で適用できるよう変更することが望ましいとした。

 将来世代のために、負担を分かち合ってもらおうという趣旨は理解できる。

 年金額が少ない人への支援では、新年度から月5千円の給付措置を実施することが決まっていたが、消費税再増税が先送りされたため、17年4月に延期された。

 この措置を着実に実行するとともに、税制や医療、介護など幅広い分野で対策を講じるよう求めたい。

 気になるのは、報告書を受けた制度改革の実施時期を政府が明示していないことだ。今通常国会に関連法案を提出するかどうかも分からない。

 厚生労働関係で他に重要法案が多いためというが、国民の受けが悪いとの判断があるとすれば問題である。

 痛みを伴う改革は避けて通れないのが現状であり、先送りするほど痛みは大きくなる。報告書が指摘するように、政府はスピード感を持って取り組んでもらいたい。