農協改革をめぐる政府とJAグループによる対立は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の組織体制を見直すことで決着した。

 農協への切り込みを岩盤規制打破の象徴と位置付けた安倍政権が、JA全中の抵抗を押し切った形だ。

 JA全中は2019年3月末までに一般社団法人に転換し、全国に約700ある地域農協への監査や指導の権限を失う。

 政府は来月中にも農協法改正案を今国会に提出する予定で、農協制度が大幅に見直されるのは約60年ぶりである。

 日本農業の現状を考えれば、農業全体に改革が不可欠であることは言うまでもない。農協の組織や制度にも問題はあろう。

 しかし、今回の農協改革が農業の再生や農家の所得増につながるのかどうか、大いに疑問が残る。

 議論の過程で、主目的であるはずの農業再生が置き去りにされた感は否めない。農業者の高齢化や耕作放棄地の拡大など、日本の農業が直面している課題に有効な処方箋は示されなかった。

 政府側は、JA全中の権限をなくし、地域農協に自由裁量を与えれば、農家の所得が増えると繰り返した。

 多くがこれまでJA全中の指示に従うだけで、自らの経営努力が不十分だったとみているからだ。

 改革により、地域農協の自主的な取り組みが促されるのは分かるが、それがなぜ所得増に直結するのか。農家の率直な疑問に対して、明確な根拠は示されていない。

 これまでの議論では、改革後の姿が見えづらい。政府は丁寧に説明し、現場が混乱しないように努めなければならない。

 JA全中の指導を廃止するだけで、日本の農業が再生の扉を開けられるなどという単純な問題ではない。

 農協改革に併せて、生産力や販売力の強化策など農協や農家を後押しする施策の展開を、政府に強く求めたい。

 JA全中の指導は、小規模な兼業農家の保護を優先してきたとされる。それが経営に優れた担い手農家の農協離れを招いた。

 今回の改革により、地域間競争が激しくなるのは間違いない。

 地域農協は今後、それぞれに経営努力を一層求められよう。改革を主導する人材をいかに確保するかが、経営の重要な鍵となる。

 県内には16の地域農協があり、正組合員7万7千人と、農家以外の准組合員3万2千人が加入している。

 農家や地域の暮らしを守るために、各地域農協は連携して、激化する競争への備えを急ぎたい。

 都道府県中央会は農協法で規定された連合会に転換した上で、存続する。JA徳島中央会は引き続き県内の農業に対して重い責任を背負うことになる。

 徳島中央会は、自己改革プランを来月にまとめる予定だ。生産者の意欲を引き出す具体策をどれだけ盛り込めるかが注目される。

 環太平洋連携協定(TPP)交渉が大詰めに差し掛かっており、外国から安価な農産物の輸入が増える可能性が高まっている。

 農協改革を農業再生につなげるように、国会で議論を深めなければならない。