政府は周辺事態法を改正し、自衛隊活動を事実上制約してきた地理的概念を撤廃する考えを打ち出した。

 新たな安全保障法制の整備に向けた自民、公明の与党協議会で提案した。

 国際紛争が起きたときに展開する他国軍の後方支援などのため、自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法も新設する方針だ。

 さらに、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の武器使用基準を緩和するPKO協力法改正も求めた。

 自衛隊の海外活動が際限なく広がるのを防ぐハードルを、一気に取り払うような提案である。

 安倍晋三首相は「あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする」と説明しているが、日本が戦争に巻き込まれる恐れは格段に高まる。

 戦後日本が貫いてきた「平和主義」と「専守防衛」の理念を変質させる動きに、強い危惧を抱かざるを得ない。自衛隊の活動をなし崩し的に広げることは認められない。

 1999年に制定された周辺事態法は、朝鮮半島有事を想定した法律である。日本周辺地域で日本の平和と安全に重要な影響を与える事態を「周辺事態」とし、実施する日米協力などを定めている。

 「周辺」については、小渕恵三首相(当時)が「中東やインド洋は想定されない」と述べ、自衛隊活動には地理的制約があると認識されてきた。

 政府は、法律から「周辺」の文言を削り、法律名も変える意向だ。米軍だけでなく、オーストラリア軍など他国軍への後方支援も可能にする。

 だが、地理的に遠く離れた場所での出来事を、どのようにして、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態だと判断するのか。曖昧なままでは、世界中どこにでも自衛隊が派遣される可能性がある。

 一方、政府が新設を目指す恒久法は、日本に直接関係がない事態でも、自衛隊を速やかに海外派遣できる法律だ。

 従来はイラク復興支援特別措置法など、その都度、国会で派遣の是非や任務などを審議して法律を制定してきた。恒久法にすれば、国会審議は不要になる。

 しかも政府は、国連安全保障理事会の決議に基づかずに武力行使する有志国連合の支援も可能とする方針だ。

 これでは、歯止めがかからなくなる。国会承認を必要とする案が挙がっているが、それは最低限の要件であり、どこまで実効性があるのか見通せない。

 政府は「他国軍の武力行使との一体化」を禁じると法案に明記する方向で検討している。国際紛争を解決する手段としての武力行使を禁じる、憲法の理念を踏まえてのことだという。

 しかし、従来認めなかった戦闘準備中の他国軍機への給油や整備を、戦場以外なら武力行使との一体化に当たらないと容認する考えだ。

 加えて、PKOに参加する自衛隊の武器使用基準を緩めるだけでなく、停戦前の他国軍への後方支援活動などについても使用基準の緩和を検討する。

 それで、憲法の理念を踏まえたといえるのだろうか。

 政府の提案に対して、公明党からは異論や慎重論が出ている。与党協議会でしっかり議論するのはもちろん、法案提出前でも国会で問題点を掘り下げる必要がある。