安倍晋三首相の東京五輪招致演説「状況はコントロールされている」とは懸け離れた実態が、また明るみに出た。東京電力福島第1原発から汚染水が港湾の内外に漏れ出ていた。

 原発事故からもうすぐ4年になるというのにである。福島の人々や国民の東電に対する不信は高まるばかりだ。

 何よりも問題なのは、東電が昨年4月に港湾外(外洋)への汚染水流出の事実を把握しながら、防止策を取らず、放射性物質の測定データも公表しなかったことである。

 2号機の原子炉建屋屋上にたまった放射性物質を含む雨水が、排水路に流れ、海に排出されていた。2011年3月の事故発生直後から続いていたとみられる。

 東電は「隠すつもりはなく、放射線量を下げるために排水路の清掃などに没頭していた」と釈明している。

 隠蔽体質はこれまで度々指摘されてきたのに、情報公開の自覚がないと言わざるを得ない。汚染源が特定できなかったにしても、事実はすぐに公表すべきだった。

 東電は13年夏に地上タンクから漏れた高濃度汚染水が外洋に流れたのをきっかけに、一部排水路の排出口を港湾内へ付け替えた。その時点で、全ての排水口を港湾内に変更する必要があった。

 首をかしげるのは、安倍首相が衆院予算委員会で「港湾外の放射性物質濃度は法令で定める限度に比べて十分低いままだ。汚染水の影響は、港湾内にブロックされている」と答えていることである。

 環境汚染、風評被害が懸念される事態であり、影響の深刻さに危機感を持つべきだ。

 東電と国から流出の説明を受けた地元漁業者からは「信頼関係が崩れた」「漁業者を甘く見ているのか」と怒りの声が相次いだ。地元自治体が抗議したのも当然だろう。

 これとは別に、先月22日に別の排水路を通じて汚染水が港湾内に流出した。その後、港湾内の中央付近や外洋とつながる港湾口で放射性物質濃度が上昇している。流出の原因は分かっていない。

 東電が監視を強め、原因を早急に突き止めなければならないのは言うまでもない。

 もう一つ気掛かりなのが、排出先が港湾内なら、放射性物質は湾内にとどまり、外洋の環境汚染を招かないのかという点だ。シルトフェンスでは完全に遮断できない。海水で薄まれば「影響はブロックされている」と言えるのか。

 汚染水対策として、東電は山側から原子炉建屋に流入する前の地下水を海へ放出する「バイパス」作業を昨年5月に始めた。忘れてならないのは、漁業者が苦渋の決断でそれを受け入れたことだ。

 これにより、原子炉建屋に地下水が流れ込んで毎日増える汚染水が、400トンから300トンに減っている。

 さらに汚染水を減らすため東電は、建屋周辺の井戸「サブドレン」から地下水をくみ上げて浄化した上で海へ流す計画への理解を、漁業者に求めていたところだった。

 東電のお粗末な対応で、漁業者との協議が滞り、汚染水処理をさらに遅らせる可能性がある。

 それは廃炉、復興の遅れに直結する。「福島の復興なくして日本の再生なし」「国が前面に立つ」というなら、政府は汚染水処理を東電任せにせず、関与を強めるべきだ。