自民党が党大会を開き、今年の運動方針を採択した。

 結党60年の節目に当たって、党是としている憲法改正を前面に打ち出したのが特徴である。

 改憲を悲願とする安倍晋三首相(党総裁)の意向が強く反映されたといえよう。

 しかし、改憲に対して国民の理解が十分に進んでいるとは言い難い。

 自民党は、連立与党を組む公明など他党や国民に受け入れられやすい条項から改正を目指すようだが、改憲ありきの姿勢は疑問である。

 憲法の改正は、国のかたちを変えることにつながる。議論は慎重に進めなければならない。

 運動方針は今年が結党60年になることに触れ、「あらためて胸に刻まねばならないのは、日本の文化・伝統・国柄に立脚し、憲法改正を党是として出発した保守党の矜持だ」と強調した。

 その上で「着実な実行」を目指す政策の一つに改憲を挙げ、「賛同者の拡大運動を推進する」とした。

 文言からは強い意欲が伝わってくる。だが、なぜ憲法を変えなければならないのか、どこをどう改めるのかは明確にしていない。

 まず取り組むテーマとして党内で浮かんでいるのは、良好な自然環境を享受する権利である環境権と、外国からの武力攻撃や大災害時の対応について定める緊急事態条項の新設である。

 考えなければならないのは、専門家から、現行の憲法や法律で対応できるとの指摘がなされていることだ。

 賛同を得やすいテーマで改憲の実績をつくり、国民の抵抗感を弱めて「本丸」の9条改正に取り掛かろうという狙いが透けて見える。

 自民党は2012年に決定した改憲草案で、戦争放棄を定めた9条に自衛権行使を幅広く認める文言を加え、国防軍創設を明記した。96条の改憲発議要件も緩和するとしている。

 さらに、国民の幸福追求権を「公益および公の秩序」に反しない限り尊重すると改め、国旗国歌の尊重や家族相互の助け合いを盛り込むなど、国民に義務や責任を課す条項が目立っている。

 こうした内容で、果たして広く賛同者を得られるのだろうか。

 共同通信社が昨年12月に実施した全国世論調査で、改憲に反対が50・6%と賛成の35・6%を大きく上回るなど、国民の間では否定的な見方が根強い。

 首をかしげるのは、重大な課題であるにもかかわらず、党内から異論や慎重論がほとんど聞こえてこないことだ。党内論議が不十分である。

 かつての自民党は、さまざまな政策をめぐって活発に議論し、異論を受け止める寛容さがあった。多様な意見を取り入れてきたことが、長期政権を続けられた原動力だったともいえよう。

 その柔軟さが失われ、反対を唱えられない風潮があるとするなら、政権党として問題である。

 運動方針は今後の改憲の道筋について、国民各層の理解を得ながら、衆参両院の憲法審査会や各党と連携し、改憲原案の検討・作成を目指すとしている。

 拙速は許されない。安倍首相は謙虚な姿勢で、国民の声に耳を傾けてもらいたい。