自衛隊の活動範囲や役割が際限なく広がるのではないか。そんな懸念が拭えない。

 安倍政権が整備を目指す新たな安全保障法制の骨格について、自民、公明両党が正式に合意した。

 集団的自衛権行使や他国軍への後方支援など5分野にわたって、自衛隊活動を拡大させる際の方向性を示したものである。

 一定の歯止め策は挙げているが、曖昧な表現にとどまっており、どこまで実効性を持たせられるかは不透明だ。

 戦後日本が堅持してきた「平和主義」と「専守防衛」の理念を骨抜きにすることは許されない。今後、政府が本格化させる法案化作業を厳しく見守る必要がある。

 骨格に盛り込まれた5分野は<1>武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対応<2>周辺事態法の改正<3>他国軍を後方支援するための恒久法制定の検討<4>国連平和維持活動(PKO)協力法の改正<5>集団的自衛権の行使-である。

 いずれも、これまで自衛隊ができないとされてきた活動を、一定の条件を満たせば可能にしようとするものだ。

 例えば、周辺事態法は朝鮮半島有事の際の米軍支援を想定しており、地理的制約があると認識されてきた。

 骨格は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態などと認められれば、米軍や他国軍を支援できると改める方向性を示した。

 これにより、地理的制約がなくなり、支援対象も米軍以外に広がることになる。

 また、PKO協力法以外での海外派遣は、時限法の特別措置法で対応してきたが、恒久法は随時派遣を可能にする。派遣の是非についての国会審議も不要になる。

 問題が多いにもかかわらず、拡大を抑制する方策は明確ではない。

 骨格は自衛隊の海外活動について、周辺事態法による派遣では「原則国会の事前承認を要する」としているが、恒久法での派遣では「国会の事前承認を基本とする」と書き分けた。

 国会承認を求めた公明党は、厳しい制約を課すことができたと解釈しているが、自民党からは「事後承諾もあり得る」との声が出ている。

 どちらにも取れる表現になったのは、来月末に予定される日米防衛協力指針(ガイドライン)の再改定をにらんで法案化作業を急ぐ自民党が、「日程優先」で重要論点の詰めを先送りしたためだ。

 骨格は、他国の武力行使との一体化を防ぐ枠組みを設けることも明記した。だが、安倍政権は「現に戦闘行為を行っている現場(戦場)」以外なら一体化しないとの立場を取っており、有効な枠組みになるかどうかは見通せない。

 さらに、集団的自衛権の行使では、昨年閣議決定した武力行使の新3要件を「条文に過不足なく盛り込む」としたものの、「国民を守るために他に手段がない」との要件の扱いは明示しなかった。

 このままでは、自衛隊がいつでも、どこにでも派遣されるようになりかねない。

 例外なく国会の事前承認を要件とするなど、公明党は来月再開する与党協議で、厳格な歯止めがかかるよう主張してもらいたい。

 政府は5月中旬の法案提出を目指している。国会はそれを待たず、問題点を追及すべきである。