農林水産省は、カロリーベースの食料自給率目標を、従来の50%から45%に引き下げる方針を明らかにした。

 目標引き下げは初めて。5年ごとに見直す「食料・農業・農村基本計画」案に盛り込まれた。今月中に閣議決定される見通しだ。

 自給率は40%を切った状態が続いており、実現可能な目標に切り替えたのだという。自給率向上から収益力重視への転換も狙っている。

 日本の自給率は先進国の中で最低水準であり、たとえ目標を45%に変更しても、高める必要がある状況に変わりはない。

 目標を引き下げる以上、政府は確実に達成できるように取り組まなければならない。

 見直しの背景には、自給率向上を目的としたこれまでの農政が農業強化につながらなかったことへの反省がある。

 農水省はコメだけではなく、カロリーは低くても需要のある野菜や果物などの生産を後押しすることに力を注ぐ方針だ。

 「もうかる農業」の実現が新規参入を促し、結果的に食料自給率の向上につながるとみているからだ。

 財務省が昨年、補助金に依存した自給率のアップは限界にきているとして、目標引き下げと関連予算の効率化を求めたのも影響したのだろう。

 民主党政権時代の2010年に45%から50%へ引き上げたが、小麦生産の大幅増など当時から非現実的との指摘もあった。今回は元に戻すことになる。

 目標を見直すのはやむを得ないとしても、新しい目標達成への道筋も不透明だ。

 目標を掲げながら過去5年間、自給率が上昇しなかったことをきちんと検証する必要がある。

 環太平洋連携協定(TPP)の交渉が進み、農産物の関税引き下げへの不安が増す中での目標変更は、農業従事者の意欲をそぎはしないだろうか。

 政府は、国内農業の将来像や具体的な振興策を明確に示さなければならない。

 世界的な人口増加や気候変動、紛争などにより、中長期的に見て食料需給が逼迫する懸念がある。

 そうした事態も見据えて、農水省はどれだけの食料を国内で生産することが可能かを示す「食料自給力」の指標を創設した。

 栄養バランスを考慮せず、イモ類を中心に作付けした場合、1人当たり1日のエネルギーは2754キロカロリーで、必要量を約600キロカロリー上回る。

 ただし、1日3食に焼き芋を2本ずつ、白米のご飯は朝食に1杯だけと、日常の食生活と懸け離れたものとなっていて、指標としての有効性に疑問符が付く。

 労働力や農地面積など試算の前提が甘いという指摘もあるが、国民一人一人が食糧安全保障について考えるきっかけとして活用したい。

 基本計画では、今後も農業従事者、農地面積ともに減少が続くと見込んでいる。

 農業を再生させるには、後継農家の育成や耕作放棄地の増大防止、国産農産物の消費拡大など総合的な取り組みが欠かせない。

 農業県である本県も、国や市町村などと連携して対策を急ぎたい。

 安全安心な食料の安定供給は、国内農業の強化抜きには語れない。