国民一人一人に12桁の個人番号を割り当て、納税や年金など制度ごとに管理されている情報を一元化するマイナンバー制度が、来年1月から始まる。
 
 行政事務を効率化し、国民の手続きも簡素化するのが目的だ。
 
 ことし10月の個人番号の通知を待たず、政府は適用範囲を金融にも広げる改正案を、今国会に提出した。
 
 個人資産を正確に把握して、脱税や生活保護の不正受給を防ぐ効果を見込んでいるようだ。
 
 マイナンバー制度は、納税や社会保障で公平性が増すとの期待がある半面、情報流出・不正利用や、監視社会の傾向が強まることへの懸念も残っている。
 
 なぜ適用範囲の拡大を急ぐのか、疑問である。
 
 改正案では、2018年から個人番号を預金口座へ適用できるようにする。当初は任意だが、21年からは義務化も検討する。
 
 このほかにも、予防接種の履歴管理など医療分野や、地方公共団体の福祉分野での利用拡大策も盛り込まれた。
 
 政府は今後、健康保険証の役割も持たせるなど機能を増やして、普及を後押しする方針だ。
 
 マイナンバー法は、13年5月に成立した。
 
 その際に、当初の利用範囲は税と社会保障、災害対策に限定して、施行から3年後をめどに範囲拡大を検討するとされていたはずだ。
 
 利用開始まで1年を切ったが、政府が1月に行った調査では「内容を知らない」という人が7割にも上った。11年11月の前回調査で、「知らない」は8割以上。法が成立してから、認知度は約1割向上しただけだ。
 
 政府のPRが不十分だと言わざるを得ない。
 
 納税や社会保障など暮らしに密接に関わっている制度なのに、これほど国民の理解が低ければ、とても立ち行かないだろう。
 
 政府はまず制度の周知徹底に力を注ぐべきである。
 
 政府の調査では、個人情報の扱いで最も不安に思うことは「情報の漏えいやプライバシーの侵害」「不正利用による被害」で、それぞれ3割を超えている。
 
 既に、同様の番号制度を導入している米国や韓国では、個人番号の不正取得による「なりすまし」犯罪が後を絶たず、利用を制限する動きも出ている。
 
 1968年に導入した韓国では、オンラインでの利用が活発化した90年代以降、情報流出が増えている。日本でも同じ事態が起きる恐れはないのか。
 
 サイバー犯罪は増大しており、政府や企業は、セキュリティー対策に万全を期すことが重要である。
 
 マイナンバーの適用範囲を広げれば、利便性は増すかもしれない。その一方で、一元化した情報の種類が多いほど、漏えいした場合に被害も大きくなるのは当然だ。
 
 個人の資産情報が国の監視下に置かれることに、抵抗を感じる国民も少なくないだろう。将来的に治安維持や事件捜査を名目にした利用につながるのでは、と危ぶむ声も一部にはある。
 
 国会での慎重な審議を通じて、問題点を修正するなど、国民の不安の解消に努めることが求められる。