消費税率が8%に引き上げられて1年が過ぎた。

 増税前の駆け込み需要の反動減が長引き、景気は今も足踏み状態が続いている。

 安倍晋三首相は、今年秋としていた10%への再増税を2017年4月に先延ばしし、その際は景気の状況に関係なく実施するとしている。

 だが、景況がこのまま推移すれば、税率を上げることなどおぼつかなくなろう。

 消費増税の目的は、社会保障制度の維持・充実と財政健全化であり、いずれも避けて通れない課題である。

 景気をどう上向かせ、再増税できる環境を整えるのか。政府の手腕が問われる。

 増税後、国内総生産(GDP)は昨年4~6月期、7~9月期と2四半期連続でマイナスとなった。政府は当初、昨年の夏ごろには反動減の影響が収まるとみていたが、楽観的過ぎたといえよう。

 10~12月期はプラスに転じたものの、0・4%増と景気の持ち直しとしては力強さを欠いている。

 低迷の最大の要因は、GDPの6割を占める個人消費が回復していないことだ。

 確かに、安倍政権の経済政策・アベノミクスで円安・株高が進み、輸出関連の大企業を中心に賃金は増えた。しかし、物価の上昇には追い付かず、実質賃金は19カ月連続で減少しているのが現状だ。

 足踏み状態から脱するには、所得を上げて家計を潤し、消費を増やす「景気の好循環」をつくる必要がある。

 今春闘では前年を超える賃上げ回答が相次いでいるが、やはり大企業に偏っている。

 徳島県など地方の大部分を占める中小・零細企業の状況は、依然として厳しい。賃上げの動きを中小に波及させ、地方を元気にしなければならない。

 先日開いた「政労使会議」は、中小企業の支援策で合意した。

 原材料費の高騰を、下請けが適切に価格に上乗せできるようにするといった内容だ。対策を徹底し、中小企業の賃上げに結びつけたい。

 消費増税1年を迎えた今月は、値上げの春でもある。原材料価格の上昇を反映して乳製品などの食品が上がり、家計は一段と苦しくなる。

 消費税には所得の低い人ほど影響が大きくなる逆進性がある。にもかかわらず、低所得者や年金に頼る高齢者への目配りは十分とはいえない。

 消費増税で目指した社会保障の充実も、実感している人は少ないだろう。今月からは年金の支給抑制や介護保険料のアップなどが始まり、負担感はむしろ増すことになる。

 財政では、本年度予算案の総額が過去最大となるなど、税収の伸びを受けて政府の危機感は薄らいでいる。

 これでは国民の理解は到底得られまい。

 政府は消費増税の目的をあらためて振り返り、この1年の経済運営をしっかり検証して、景気の好循環が生まれるようにしなければならない。