中国政府は、2019年の経済成長率の目標を引き下げる一方、インフラ投資拡大などで景気の安定に最優先に取り組む方針を打ち出した。李克強首相が全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で明らかにした。

 中国は、国内経済の減速と米国との貿易摩擦の二重苦に見舞われており、世界経済にも大きな影響を及ぼしている。そうしたことを踏まえ、強い意志を示したことは理解できる。

 ただ、債務拡大を伴う景気刺激策は将来の金融リスクを増大させる危うさもはらむ。習近平指導部は、成長維持に役立つ景気対策とともに、これまで進めてきた構造改革にも本腰を入れる必要がある。

 19年の成長率の目標は経済成長の鈍化を受け、6・0~6・5%に設定した。1月に発表された18年の成長率は6・6%と28年ぶりの低水準にとどまったが、さらに引き下げる結果となった。深刻な状況をうかがわせるものだ。

 政府は近年、債務抑制など構造改革を優先する方針を掲げていた。ところが、金融規制などによって企業の資金繰りが悪化。企業破綻や従業員のリストラが相次ぎ、日本など世界各地の企業業績にも悪影響が出始めている。

 民営企業の減速は、雇用問題に直結する。社会不安が高まれば、習氏の足元が揺らぎかねない。

 このため、過剰設備や過剰債務など、リーマン・ショック後の大規模刺激策の副作用が残る中、2兆元(約33兆4千億円)近い企業減税を実施するほか、鉄道や道路などへの投資拡大によって景気を下支えすることにした。

 李氏は「米中摩擦で一部企業の生産や経営が影響を受けた」とする。しかし、専門家の中には「市場原理を軽視し、民営企業にも国の関与を強めた習指導部の経済失策」との見方があるほか、今回の経済運営によって構造改革が先送りになることを危惧する向きもある。

 政府はこうした指摘に真摯に耳を傾け、不信の解消に努めなければならない。

 米国との貿易摩擦が、想定以上の景気減速を招いたことは確かだ。報告の中で李氏が対米配慮をにじませたのは、協議の妥結が何よりも重要だということを認識しているからだろう。

 米国が求める貿易不均衡の是正をはじめ、知的財産権の保護や技術移転強要の停止、市場の開放などに取り組むことを確約した。

 このうち、外国企業の技術を強制的に移転させることを禁じる外商投資法案は、異例の早さで近く成立する見通しだ。とはいえ、法案は原則を羅列しただけで具体性に欠けるとの懸念が強い。実際の運用がどうなるかも不透明だ。

 米中協議の行方は今後の世界経済を左右する。今月下旬には米中首脳が会談する予定だ。両政府は早期に決着を図り、合意内容を誠実に履行すべきである。