労働者が解雇され、裁判で無効判決が出た場合などに、職場復帰ではなく金銭の支払いで決着する「解決金制度」の導入を検討すべきだとする提言を、政府の規制改革会議がまとめた。

 提言は「労働者側からの申し立てのみを認める」と限定し、不当解雇に対する権利行使の選択肢を多様化するとしている。

 ただ、労働者側には、企業が金さえ払えば解雇しやすくなるのではないかとの懸念がある。

 厚生労働省は今後、制度設計の議論を始める方針だ。

 制度は本当に働く人のためになるのか。導入の是非の議論に当たっては、労働者の権利を最優先にする姿勢を忘れないでもらいたい。

 解雇については、労働契約法が、客観的に合理的な理由がない場合は無効とすると定めている。

 さらに、経営悪化による「整理解雇」には、判例が厳しい4条件を付けている。経営状態からみて人員整理の必要があるのかどうかや、配転、出向といった解雇の回避努力を行っているかなどで、これらを満たさなければ解雇は認められない。

 しかし、実際には不当な解雇が多く、わずかな解決金で泣き寝入りせざるを得ない労働者が少なくないといわれている。

 解雇をめぐる紛争の解決方法には、訴訟のほか、労働委員会によるあっせんや裁判所の労働審判などがあるが、一般的に解決金は訴訟に比べて安い。

 だが、訴訟は通常、解決までに1年以上もかかる上、解雇無効と判断されても、職場に戻れるケースは少ない。

 解決金制度が導入されれば労使紛争の長期化が避けられ、一定水準の解決金が確実に支払われるようになる。

 経営者に比べて立場の弱い労働者にとって、ルールが明確になるメリットは大きいだろう。

 一方で、解決金の水準をどうするかなど、導入には課題もある。

 解決金の額が低ければ、まずは解雇という企業が増えかねない。半面、高く設定すれば、余力がない中小企業の経営を圧迫することになる。

 申し立ては労働者側からに限るとしているが、労使の力関係を考えると、事実上企業に迫られ、意志に反して金銭解決を余儀なくされるケースが生じることも予想される。

 加えて、いったん導入されれば、経営者側からの申し立てもできるようになるのではないかとの不安の声が、労働者側から出ている。

 乱用を防ぐ仕組みとともに、制度改変に対する歯止めが欠かせない。

 解決金制度は既に多くの主要先進国が整備しているが、解雇は当事者だけではなく、家族ら身近な人たちの生活を脅かす問題である。

 労使双方の代表らを交えて、慎重に検討しなければならない。