自民、公明両党の新たな安全保障法制に関する与党協議会に、政府が主な関連法の原案を提示した。
  
 集団的自衛権の行使を認める「存立危機事態」を新設し、米軍を含む他国軍への後方支援も拡充する。
 
 自公両党から強い異論は出ず、大筋で一致した。平時から有事まで自衛隊の任務を拡大する重大な法整備を、与党が追認しているという印象は拭えない。
 
 昨年7月の集団的自衛権の行使容認に続き、法整備も性急だ。戦後70年間一人の戦死者も出さなかった平和国家としての在り方が、根底から覆されるのは容認できない。
 
 政府は、武力攻撃事態法を改正し、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされる明白な危険がある事態」を「存立危機事態」として、集団的自衛権の行使に道を開く。
 
 朝鮮半島有事の際の米軍支援を想定した周辺事態法の改正では、日本の平和に重要な影響を与える「重要影響事態」を創設し、米軍以外の他国軍の支援も可能にする。
 
 事実上の地理的制約だった「周辺事態」の文言は削除される。公明党は、「極東」での自衛隊活動に事実上限定する仕組みづくりを狙ったが、最終的に日米安全保障条約の記述については「条約の効果的な運用に寄与することを中核とする」という文言を残すことで決着した。
 
 法改正によって、日本周辺から離れた地域で自衛隊が他国軍を支援できるようになれば、問題が多すぎる。
 
 さらに、国連平和維持活動(PKO)協力法を改正し、新たに国連の枠組みのPKOとは別に行う治安維持活動などを「国際連携平和安全活動」と定義した。他国部隊や国連要員が武装勢力に襲撃された際に、武器を使って助ける「駆け付け警護」も初めて認めた。
 
 他国軍支援の拡大や駆け付け警護などの新任務で、自衛隊員が死傷する事態を懸念する国民は少なくないだろう。
 
 確かに、近年の沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国船の威圧的行動や、イスラム過激派のテロは日本の脅威である。
 
 だからといって、自衛隊の任務をどこまでも拡大してよいはずがない。紛争をめぐる日本の国際貢献については、人道・民生分野に限るのが本来の姿だ。
 
 与党協議では、他国軍への後方支援で自衛隊を派遣する際の事前承認の在り方が未決着だが、急ぐ必要はない。
 
 共同通信社が3月に実施した全国電話世論調査によると、今国会で安全保障関連法案の成立を図る安倍晋三首相の方針には49・8%が反対し、賛成の38・4%を上回った。
 
 他国軍を後方支援する自衛隊の海外派遣では、77・9%が、必ず事前の国会承認が必要だとしている。
 
 政府は5月中旬の閣議決定を目指しているが、熟慮して引き返す勇気を持つべきだ。