安倍晋三首相と中国の習近平国家主席の首脳会談が、5カ月ぶりに行われた。

 日中関係は最悪の状態にあったが、昨年11月の首脳会談以来、徐々に改善の兆しが見え始めている。

 世界第2、第3位の経済大国である両国が信頼を醸成することは、アジア太平洋地域の安定にとって欠かせない。

 この流れを加速させるため、今後もさまざまな機会をとらえて対話を重ねるよう求めたい。

 会談では「戦略的互恵関係」を推進することをあらためて確認した。

 双方が共通利益の拡大を目指す戦略的互恵関係は、第1次安倍政権時の2006年に、首相自身が当時の胡錦濤主席と共に打ち出したものだ。日中関係を規定する理念であり、両首脳がその意義を強調したことは歓迎できる。

 今回の会談が実現した背景には、日中それぞれの思惑があったようだ。

 成長が鈍化する中国には、日本との関係強化が経済立て直しの柱の一つだとの判断がある。創設を主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を成功させるため、日本を引き込みたいとの狙いもあっただろう。

 一方、訪米を控えた安倍首相には、日中対立の先鋭化を懸念する米国に、対話を進める姿勢を示す必要があった。

 いずれにせよ、関係改善への道は緒に就いたばかりである。歩み寄りの動きを確かなものにするには、相互理解を深めることが大切だ。

 その点で重要な鍵を握るのが、今夏に安倍首相が発表する戦後70年談話である。

 習氏との会談の直前、アジア・アフリカ会議(バンドン会議)で演説した安倍首相は、先の大戦への「深い反省」を表明したものの、戦後50年の村山富市首相談話に明記された「植民地支配と侵略」への「心からのおわび」には言及しなかった。

 安倍首相は、村山談話を「全体として引き継ぐ」としながらも、70年談話にそのまま盛り込むことには消極的だ。先日のテレビ番組でも「歴史認識では(村山談話などの)基本的な考え方を引き継ぐ。引き継ぐと言っている以上、もう一度書く必要はない」と述べている。

 しかし、村山談話は日本の歴史認識として国際的に定着しており、核心部分の表現を変えれば、誤解を招く恐れがある。

 安倍首相は、談話で重視する論点の一つに「中国や韓国をはじめとするアジア諸国との和解」を挙げている。「未来への土台は過去と断絶したものではあり得ない」とも語っている。

 過去より未来志向に軸足を置くにしても、過去と真(しん)摯(し)に向き合わなければ説得力に欠けよう。70年談話を国際社会の共感が得られるものにしなければならない。

 そうした努力を積み重ね、日中関係改善の動きを軌道に乗せていきたい。