首相官邸の屋上で小型無人機「ドローン」が見つかり、大きな波紋を広げている。
 
 警視庁は、ドローンを官邸屋上に放置し、官邸事務所の業務を妨害したとして、威力業務妨害容疑で、福井県小浜市の無職の男を逮捕した。反原発を訴えるためだと男は供述している。
 
 危機管理の専門家は「爆発物を搭載していたらどうなっていたか」と警備の甘さを指摘する。テロへの備えが重要な時期に、官邸の警備に穴があったことを反省すべきだ。
 
 操縦者に公的な免許制度もないドローンは、野放しで飛行しているのが実態だ。墜落事故でけが人も出ている。
 
 事件や事故を防ぐためには、法規制が急務である。
 
 問題のドローンは、中国メーカー「DJI」の「ファントム2」で四隅にプロペラがある。小型カメラや発煙筒のようなものが付いており、砂が入ったプラスチック容器からは微量の放射性セシウムが検出された。
 
 男は「自分が反原発を訴えるために総理官邸にドローンを飛ばした。容器に福島の砂を入れた」と話している。
 
 DJIの日本法人は製品の仕様を変更して、官邸と皇居周辺を飛行できなくするとしたが、それだけで問題は解決しない。
 
 航空法によると、無人機は空港周辺を除けば、航空機のルート下は150メートル未満、それ以外は250メートル未満の低空であれば、届け出なしで飛ばせる。
 
 市民や子どもたちの頭上にいつドローンが落ちてくるか分からない。そんな状況は看過できない。
 
 搭載カメラで撮影できるドローンは、東京電力福島第1原発周辺の放射線測定で使われ、注目された。安価で操縦が簡単なことから、防災、警備、商業目的や趣味の利用が一気に拡大。経済産業省によると、国内で数十万機が流通している。
 
 徳島県内でも業務での利用が広がり、空撮会社や建設コンサルタント会社などが写真撮影などに使用。徳島大学では、災害時の物資輸送にも応用できる「空中台車」の研究が進められている。
 
 ビジネスチャンスの拡大などに大きな可能性を秘めるドローンの利用は、さらに増えるだろう。それだけに、安全の確保が大きな課題である。
 
 徳島市では先月、活用法と安全啓発の講演会が開かれた。万が一、ドローンが落下しても人に迷惑が掛からないよう、飛行区域には細心の注意を払わなければならない。
 
 政府は、重要施設上空の飛行制限に向けた法整備の検討に着手した。ドローン購入者に名前、住所の登録を義務付ける案などが浮上している。飛行距離が長い高性能機種の操縦者への免許制の導入なども想定されるという。
 
 経済活動や技術革新を妨げない配慮も必要だ。その上で、テロはもちろん市民の安全確保のために、法規制に知恵を絞ってもらいたい。