憲法改正の動きが加速している。自民党は、早ければ来年にも憲法改正の国会発議を行う構えだ。

 その動きを先取りするかのように、憲法の平和主義を揺さぶる局面が相次いでいる。

 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定をはじめ、自衛隊と米軍の連携を地球規模に広げる新たな日米防衛協力指針(ガイドライン)の合意、武器輸出三原則の撤廃などである。

 憲法は施行から68年を迎えて、大きな岐路に立っている。あすは憲法記念日。国民一人一人が、その役割や意義について考えたい。

 安倍政権は、安全保障法制の関連法案を今月中旬に閣議決定する方針だ。

 他国への武力攻撃に共同して反撃する集団的自衛権の行使や、他国軍を後方支援する自衛隊の随時派遣を可能にするなど、関連法案は自衛隊の任務を一挙に拡大する。

 後方支援の活動範囲は「非戦闘地域」に限られていたが、「戦場以外」へと格段に広がる。周辺事態法改正により、事実上あった地理的制約は撤廃され、米軍以外も支援対象となる。

 自衛隊が戦闘に巻き込まれたり、テロの標的にされたりする危険が高まると、不安の声が上がるのも当然だろう。

 戦後70年間、日本は憲法の平和主義にのっとり専守防衛に徹し、自衛隊の海外展開を慎重に判断し、抑制的に対処してきた。

 その一方で、人道的な支援には惜しみなく力を注ぎ、長年かかって築き上げた平和国家・日本のイメージは世界の国々が認めるところである。

 主にアジア・アフリカ諸国などでインフラ整備や医療など支援を続けてきた。安保法制は、その平和主義を大きく変質させるものだ。

 中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発など、日本を取り巻く環境が変化したという指摘はその通りだ。憲法改正や安保政策見直しを議論することも否定しない。

 問題はその手法である。

 憲法は権力を縛る規範である。その改正は慎重でなければならず、時の権力者が都合のいいように解釈を変えることがあってはならない。

 日米防衛協力指針の改定では、「表裏一体」の関係にある安保法制の国会審議が始まっていないにもかかわらず、対米公約を先行させたのは順序が違う。

 解釈変更や対米公約という形で改正に向けた下地をつくり、外堀を埋めようという意図が透けて見えはしないか。

 前のめりに突き進む安倍晋三首相の姿勢には、強い懸念を禁じ得ない。

 共同通信社の世論調査では、安保法制の今国会での成立には半数近い48・4%が反対している。新指針も反対が上回っている。

 安倍政権は、国民の不安に対して丁寧な説明を心掛けるとともに、異なる意見や批判にも耳を傾ける謙虚な姿勢が必要である。