相手の居場所を正確に知ることができる衛星利用測位システム(GPS)の情報が、より簡単に犯罪捜査で使えるようになりそうだ。

 総務省は、捜査機関が相手に知らせずにGPS情報を利用できるよう、通信事業者向けのガイドライン(指針)の見直しを進めている。

 22日までパブリックコメント(意見公募)を行い、来月にも新指針を適用する。

 振り込め詐欺や誘拐などの事件捜査で有効活用が期待できる一方、プライバシー侵害を懸念する声も強い。新指針の適用には、もっと慎重であるべきだ。

 GPSは人工衛星を利用して位置を測定するシステムで、電波状況さえよければ、数メートル程度の誤差で特定できる。現在は多くの携帯電話や時計にも搭載されている。

 総務省は2011年、相手に情報を取得していることを通知するという条件付きで、携帯電話のGPS情報の捜査利用を認めた。

 これでは犯人に逃走されたり証拠を隠されたりするとして、警察庁が見直しを求めていた。警察の言い分は理解できる。人質がいれば身に危険が及ぶ恐れもあろう。

 しかし、警察が実際にどのような捜査において情報を利用するのかは、新指針では分からない。

 見直し後も引き続き裁判所の令状を必要とすることで、恣意的な利用に歯止めをかけるとするが、これでは警察の裁量に委ねる部分があまりにも大きい。必要以上に対象を広げて、容疑が薄い人の情報も収集される懸念は拭い切れない。

 一般の利用者が不安に感じることがないよう、十分な説明が求められる。

 そもそもプライバシー保護に関わる重要な方針変更を、法改正ではなく総務省の判断で行えるガイドライン改正で済ませること自体が問題だ。

 改正を議論してきた総務省の有識者会議も初回以外は非公開で、見直しの課程も不透明だと言わざるを得ない。

 電話や電子メールを通信傍受(盗聴)する捜査は、通信傍受法によって対象となる犯罪や手続きが規定されている。いつ、どこにいたかが分かる位置情報も、電話などと同様にプライバシー性は高く、保護の必要がある。

 振り込め詐欺など技術革新を悪用する犯罪が増える中、最新技術を積極的に捜査に取り入れるのは当然だろう。

 福井県では、ストーカー男に監禁された女性が、警察から借りたGPS付き緊急通報装置のおかげで助け出された例もある。

 ただし、導入に当たっては、得られる利益と起こり得る副作用についての注意深い議論と、国民的な合意形成が欠かせない。

 GPS情報の捜査利用は、乱用に対する歯止めや対象となる犯罪、運用方法などについて国会で十分に論議した上で、法律によって厳格に規定するべきである。