核軍縮や不拡散について議論する5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が国連本部で始まり、本格的な討議に入った。
 
 今年は広島、長崎に原爆が投下されて70年の節目に当たる。核兵器の脅威にあらためて目を向け、廃絶への思いを新たにすべき年にしたい。
 
 だが、核兵器をめぐる環境は悪化しているのが現状だ。
 
 会議の焦点は、停滞する核軍縮を前に進められるかどうかである。日本をはじめ加盟約190カ国は、危機感を共有し、実効性のある方策を打ち出さなければならない。
 
 核軍縮が滞っている大きな要因は、米国とロシアの関係が冷え込んでいることだ。
 
 両国は2010年の前回会議の翌年に、配備済み戦略核を1550発に減らす新戦略兵器削減条約(新START)を発効させた。
 
 しかし、動きはそこで止まり、昨年のウクライナ政変を機に暗転。米国はロシアのクリミア編入を非難し、欧州諸国と共に包囲網を築いた。
 
 これに対してロシアは、米国の欧州ミサイル防衛計画などを挙げ、軍縮を妨げているのは米国だと反論している。
 
 両者の溝は深いが、約1万6千発にも上るとされる世界の核弾頭のうち、米ロは9割以上を保有する核大国同士である。人類の安全に負っている責任は極めて重い。
 
 ウクライナで核使用の準備ができていたと発言したプーチン・ロシア大統領には、その自覚があるのだろうか。「核兵器なき世界」を提唱しながら、成果を上げていないオバマ米大統領の姿勢も厳しく問われている。
 
 米ロは対立を乗り越え、新たな削減計画を話し合うなど、会議を成功に導かなければならない。
 
 核保有国のうち唯一、中国が核弾頭を増やし、保有数を開示していないのも問題だ。
 
 さらに、前回会議で採択した行動計画の多くが実行されていないことも、世界に不安を与えている。
 
 12年に開くとしていた中東非核化の国際会議は、事実上の核保有国であるイスラエルの反対で開催できていない。北朝鮮は核開発を非難されても着々と計画を進めている。
 
 NPT体制を形骸化させる行為を許してはならない。
 
 今回の会議で注目されるのは、非核保有国の間で「核兵器禁止条約」の制定を求める声が高まっていることである。背景には、段階的な削減を掲げる保有国側の動きの鈍さへのいら立ちがある。
 
 会議で日本の被爆者代表が悲惨な体験を語ったように、その非人道性は明らかだ。オーストリアが提出した核兵器禁止を呼び掛ける文書には、70カ国以上が賛同している。
 
 日本は米国の「核の傘」の下にあることを理由に賛同を見送ったが、唯一の被爆国として理解を得られまい。
 
 後ろ向きの姿勢ではなく、核廃絶の実現に向けて、日本は被爆国としての役割を果たすべきである。