都市の若者らが地方に移り住んで活性化を後押しする「地域おこし協力隊」の事業が、徳島県内の自治体に広がっている。

 事業が始まった2009年度は、県内で協力隊員を受け入れる自治体はなかったが、昨年度には12市町村に増え、本年度は新たに鳴門市が隊員を採用した。都市から地方への人材の流入は「地方創生」の肝である。取り組みをさらに強化したい。

 協力隊は、人口流出が進む地方に新たな住民を呼び込もうと、総務省が事業化した。隊員は自治体が募集し、採用されるとその土地に住み、地域振興に携わる。

 隊員数は年々増え、県内では10年度に5人だったのが昨年度には39人に拡大。このうち7割を20、30代が占める。

 上板町では、東北出身の渡邉健太さんと楮覚郎さんのコンビが、藍の栽培から藍染商品の製造販売までを手掛け、昨年は米国で藍染体験イベントを開いた。今年3月に退任して町内で会社を起こし、引き続き藍染の振興に取り組んでいる。

 県内の隊員の活動は地域ブランドの開発、空き店舗を活用した街の活性化、棚田の再生など多岐にわたる。地域の魅力や価値を高め、活力をもたらしており、地方創生の担い手と言っても過言ではないだろう。

 隊員の任期は最長3年。昨年5月の県調査では、隊員を「卒業」した後も約半数が県内にとどまっている。地域に残る人が増えることは事業そのものの狙いであり、こうした動きを歓迎したい。

 問題は、任期を終えた後、定住を希望する人たちの職の確保である。

 国は、隊員が最終年度か、任期終了後1年以内に地域で起業する場合、最大100万円を交付する制度を昨年度に設けた。

 ただ、4年間で起業に至らない取り組みもあるだろう。国は任期の延長や助成の拡充を検討し、自治体は地方創生交付金を活用するなど支援に知恵を絞ってもらいたい。

 また、誰もが起業を目指すわけではない。任期終了後、地元企業に勤めたり、農業をしたりして地域にとどまりたい隊員もいる。そうした人の仕事をどうするか。

 隊員を受け入れた自治体は周辺自治体とも連携し、働く場の確保に努めてほしい。定住を手助けするコーディネーターや相談窓口を置くのも一考に値しよう。

 協力隊の事業は若者定住に効果があるとみて、安倍晋三首相は昨年、隊員を来年度末までに3倍の3千人に増やす考えを表明した。

 これを受け、国は隊員になる要件を緩和。当初、大都市圏や政令指定都市の住民に限っていたが、人口の多い地方都市なども対象に含めた。

 県内では今後も隊員は増えていくだろう。定住の流れが加速するよう、自治体の受け入れ態勢を一層充実させる必要がある。