アベノミクスを支える日銀の大規模な金融緩和に、限界が見え始めたともいえよう。

 2%の物価上昇目標を2年程度で達成させるとしていた日銀が、実現の時期を「2015年度を中心とする期間」から「16年度前半ごろ」に先送りした。

 デフレ脱却を目指す日銀が13年4月に大規模緩和に踏み切って以降、物価目標の時期を遅らせるのは初めてだ。

 個人消費は伸びず、消費税増税の影響を除く2月の消費者物価指数は、前年同月比で横ばいまで低下している。目標を事実上断念せざるを得なかったのは当然だろう。

 黒田東彦総裁は必要なら追加緩和も辞さない構えだが、早期達成にこだわるあまり、柔軟性を欠いてはいないか。

 目標設定の見直しも視野に、日銀は大規模緩和の効果をしっかりと検証することが必要だ。

 日銀が物価目標を打ち出したのは、値段が上がる前に多くの人に物を買ってもらい、企業の収益を増やす狙いがある。収益が増えれば賃金が上がり、景気が良くなるというシナリオだ。

 物価上昇に向け、日銀は「異次元緩和」と称して国債や上場投資信託などを大量に買い入れ、世の中に出回るお金を増やし続けた。

 その結果、円安株高が進み、輸出関連企業を中心に業績は改善した。今春闘では賃上げの動きも広がっている。景気を回復基調に転じさせたのは成果といえるだろう。

 しかし、恩恵を受けているのは都市部や大企業などに限られ、地方や中小企業には波及していないのが実情だ。

 徳島新聞社が県内主要48社に行ったアンケートでは、アベノミクスで業績が「良くなった」と答えた企業は3社にとどまり、半数以上の25社が「変わらない」と回答した。

 円安には食料品の輸入価格や原材料費の高騰という副作用があり、それが家計や中小企業の業績を圧迫している。名目賃金は伸びたものの、物価の影響を加味した実質賃金は23カ月連続の減少である。

 日銀はこうした現状にも目を向けてもらいたい。

 今後の見通しはどうか。黒田総裁は、急落した原油価格が落ち着くのに伴い、本年度後半にかけて物価上昇ペースが加速すると強調している。

 だが、原油価格は不透明な要因が多く、米国や中国の景気減速といった不安要素もある。予断は許されない。

 市場には追加緩和を求める声が強いが、円安が一層進んで家計を圧迫し、消費不振を長引かせる恐れがある。

 日銀は世の中に出回るお金の量を年80兆円増やしており、先月末に初めて300兆円を超えた。さらにペースを上げる効果はどれだけあるのだろうか。

 異次元緩和の規模が拡大し、長期化すれば、平常に戻す際に金利急騰など市場の混乱が大きくなる可能性が高まる。そうした負の側面も忘れてはならない。