果たして「平和」の名前にふさわしいものなのか。

 安全保障法制をめぐる与党協議会で、自民、公明両党が「平和安全法制整備」と「国際平和支援」両法案の全条文に正式合意した。

 集団的自衛権の行使を可能にするのをはじめ、日本周辺以外でも自衛隊が後方支援できるようにするなど、平時から有事まで、自衛隊の活動を大幅に広げる法案である。

 日米同盟を強化して抑止力を高め、日本の平和と国民の命を守るのが狙いだという。

 両党は自衛隊の任務拡大に歯止めをかけたというが、機能する保証はない。新たに作った数々の「事態」の定義も曖昧な部分が残っている。

 これでは、戦後日本が掲げてきた「平和主義」と「専守防衛」の理念が骨抜きになる恐れが強い。

 安倍政権は法案をあす閣議決定し、15日に国会提出する方針だが、このまま法制化することは認められない。

 2法案のうち、平和安全法制整備法案は、集団的自衛権の行使を認める武力攻撃事態法の改正や周辺事態法の改正など、10本の関連法案を一つにまとめたものだ。

 武力攻撃事態法改正案は、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」を、「わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生」し「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」だとした。

 しかし「密接な関係にある他国」や「明白な危険」は、どのように判断するのか。

 安倍晋三首相は中東・ホルムズ海峡の機雷掃海活動も含まれるとの考えだが、それでは適用範囲が広過ぎる。定義が不明確では、時の政権の判断次第になりかねない。

 そもそも集団的自衛権は、戦争放棄と交戦権否認を定めた憲法9条の下では行使できないとされてきた。安倍政権は昨年、行使は限定的として憲法解釈を変更したが、際限なく広がる懸念は拭えない。

 もう一つの国際平和支援法案は、特別措置法をその都度作らなくても、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能にする恒久法だ。

 歯止め策として、国会の例外なき事前承認が必要としたが、これとは別に周辺事態法改正で新設する「重要影響事態」での後方支援は、緊急時の事後承認を認める。国際平和支援法案との線引きが難しいため、抜け道になる可能性がある。

 自衛隊の活動を「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている現場(戦場)以外」に広げることと併せ、自衛隊が戦闘に巻き込まれる恐れが格段に強まろう。

 安倍首相は今夏までの法案成立を米国に約束したが、法制は安保政策だけでなく、平和国家としての国の在り方を大きく転換させるものだ。拙速な国会審議は許されない。

 野党は問題点を厳しく追及し、その危険性を国民の前に明らかにしてもらいたい。