南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で、中国による岩礁の埋め立てが急ピッチで進んでいる。

 米国の推計では、昨年末に計約2平方キロだった面積が、半年も満たない間に4倍に拡大した。

 領有権をめぐってフィリピンと鋭く対立している中国の一方的な行動を見過ごすことはできない。

 先月、中国の海洋進出をけん制する宣言が先進7カ国(G7)外相会合で採択されたほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)も「深い懸念を共有する」との議長声明を発表した。

 中国を見る近隣諸国の目は厳しさを増している。国際社会の批判に、中国は真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

 フィリピンが埋め立てを確認したのは7カ所。中には、3千メートル級の滑走路や5階以上もの巨大な建物の建設が進められている岩礁もある。

 施設は「国際海域の安全を守るため」(中国海軍高官)と説明するが、到底納得できない。米国や周辺国も防空識別圏設定をにらんだ布石とみて、軍事利用に警戒を強めている。

 中国は「九段線」と呼ばれる独自の境界線を設定して、南シナ海の大半の管轄権を主張している。だが、法的な根拠が弱く、実効支配を既成事実化するために、埋め立てを急いでいるのは明白だ。

 2012年に習近平国家主席が就任して以来、中国は「海洋強国の建設」を国策と位置付けてきた。これに伴って、フィリピン以外の近隣諸国とも摩擦が目立つようになっている。

 特に深刻なのは西沙(英語名パラセル)諸島の領有権を争うベトナムだ。昨年には両国の船舶が衝突して一触即発の事態となり、今も火種がくすぶり続ける。

 海洋権益に関して一切妥協しない中国の強硬な姿勢が、地域の安全と安定を脅かしているのである。

 ケリー米国務長官が先日、北京を訪れて、習主席や王毅外相に埋め立てに対する懸念を直接伝えた。しかし「主権を断固として守る」(王外相)として中国側は耳を貸さず、緊張緩和の兆しは見えなかった。

 これを機に、抑制的だった米国が強硬姿勢に転じた。国防総省は、中国が「領海」と主張する埋め立てによる人工島の12カイリ(約22キロ)内に米軍の航空機や艦船を進入させると表明した。

 中国も強く反発している。偶発的な衝突など不測の事態が起きるようなことがあってはならない。

 日本にとって、南シナ海はインド洋と東シナ海をつなぐ海上交通路として重要である。沖縄県・尖閣諸島の問題と重ね合わせれば、いかに危険な状況かが分かる。

 日本は米国をはじめ国際社会と連携を強めて、中国に自制を促す必要がある。南シナ海を「火薬庫」にしてはならない。