広島、長崎への原爆投下から70年の節目の、重要な核拡散防止条約(NPT)再検討会議だった。「核なき世界」の実現に通じる成果に期待したが、見事に裏切られた。

 国連本部で先月下旬から開かれていた再検討会議は、合意事項をまとめた最終文書を採択できずに決裂し、閉幕という最悪の結果となった。

 事実上の核保有国イスラエルの非核化を念頭に置いた「中東非核地帯構想」に、同盟国の米国などが反対したためだ。核軍縮よりも大国の国益が優先されたことは極めて残念である。

 会議では、米国、ロシアなど五核保有国による軍縮が遅々として進まない現状に、非保有国が不信感を募らせた。

 最終文書の採択に失敗したのは、前々回の2005年会議以来だ。NPT体制の行方が案じられる。

 米国は最終文書案のうち、中東非核地帯構想の実現に向けた国際会議を来年3月までに開くとした点が、「非現実的で実現不能」として拒否した。英国やカナダなども同調した。NPT未加盟のイスラエルへの配慮とみられる。

 エジプトは米国が合意を阻んだと非難したが、アラブ諸国などの反発は当然だ。

 「核なき世界」の提唱者であるオバマ米大統領が任期中最後の会議で後ろ向きの姿勢を示したことは、自身の立場を損なうものではないか。

 会議では、理解し難い動きもあった。日本が世界の指導者に広島、長崎訪問を促す文言を最終文書に明記するよう求めたのに対し、中国が歴史認識問題を持ち出して強硬に反対したことだ。

 中国の態度は核保有国の尊大さを如実に示している。

 最終文書案は「被爆地訪問」に代わり、「核兵器の影響を受けた人々や地域社会」との交流や経験共有を促す表現に後退した。

 それさえ採択されず、日本の努力は実らなかった。岸田文雄外相は「唯一の戦争被爆国として、被爆地出身の外相として大変残念だ」と述べ、「核なき世界」へ引き続き努力する姿勢を強調した。

 核兵器の惨禍を知る日本が果たすべき役割は重い。
 最終文書の素案には、非核保有国が制定を求める「核兵器禁止条約」が核軍縮推進の手段として例示されていた。

 しかし、段階的核軍縮を主張する核保有国の意向を反映して、禁止条約への言及は消えた。保有する核弾頭数や種類の報告を促す部分に「国家の安全保障を損なうことなく」との注釈が付き、骨抜きになったのも見過ごせない。
 
 米国とロシアは東西冷戦期に比べて保有核弾頭の数を激減させたと主張するが、説得力に欠ける。

 ロシアはウクライナ政変で核の使用を検討したとして、核軍縮の機運に水を差した。

 米ロは核軍縮を進める責任をいま一度、自覚すべきだ。

 五核保有国の立場ばかりを重んじて、NPTの求心力を失わせてはならない。