韓国で中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。

 死者は10人を超え、感染者は120人を上回った。隔離されている人は約3800人にも上る。

 日本と韓国とは年間約500万人が往来している。もともとの感染地域である中東からも含めて、日本国内へのウイルス侵入を許してはならない。政府は、空港などにおける水際対策を一層強化しなければならない。

 MERSは、新型のコロナウイルスが原因の感染症である。2012年にサウジアラビアで感染が報告されて以降、アラビア半島を中心に千人以上が感染し、うち400人以上が死亡している。

 ラクダが有力な感染源といわれている。2~14日の潜伏期間を経て、熱やせきが出て急速に肺炎に進行する。ワクチンや有効な治療法はなく、対症療法が中心だ。

 韓国で初めて感染が確認されたのは、先月20日だった。韓国政府は当初、「感染力は強くない」とウイルスの脅威を過小評価したため、対応が後手に回った。感染者が出た病院名の公表が遅れたのも、拡大を助長した一因だろう。

 今日の事態を招いた韓国政府の責任は重い。感染がこれ以上広がらないように、感染の疑いがある人を含めて隔離を徹底するなど、ウイルスの封じ込めに全力を挙げなければならない。

 また、日本など各国が今後、より効果的な対策を講じられるよう、積極的な情報公開を求めたい。

 MERSは人から人には感染しにくいと考えられてきたが、韓国では1人の患者から多くの人に広がった。最初の患者から感染した人物を介し、さらに感染が広がる「3次感染」も確認されている。

 世界保健機関(WHO)は「証拠はない」と否定的だが、ウイルスの変異には十分な注意が必要だ。

 感染拡大は、韓国経済にも暗い影を落としている。

 今月1~9日の外国人観光客の旅行キャンセルは約6万7千人に上り、韓国出張を自粛する日本企業も出ている。百貨店やスーパーでも、客足が減っている。

 景気の冷え込みを抑えようと、韓国銀行(中央銀行)が政策金利の引き下げに踏み切ったほど影響は大きい。

 国境を越えた人の往来が活発化したグローバル化時代を迎え、MERSに限らずエボラ出血熱やデング熱など感染症の脅威は高まるばかりだ。

 対応を誤れば遠く離れた地域のウイルスであっても、短時間で拡散することを韓国のケースは示している。教訓としたい。

 感染症が流行している地域を訪ねる場合、予防には手洗いやうがいを行うほか、マスクの着用も有効だ。帰国後、発熱した場合はすぐに医療機関を受診するなど、一人一人が注意することが何よりも肝心である。