阿南市の野球によるまちおこしが順調に進んでいる。全国で初めて野球を冠した「野球のまち推進課」を市が設置して5年。ユニークな取り組みで成果を挙げており、そこからは地域再生のヒントを見いだせる。

 市が柱に据えるのは、還暦を過ぎた選手らの大会の開催と、本格的な野球を楽しんでもらう「野球観光ツアー」、学生らの合宿誘致の3事業である。2007年に「JAアグリあなんスタジアム」が完成し、これを活用した地域振興策として打ち出された。

 注目すべきは、どの事業もアマチュアを対象にしている点だ。野球による活性化策となると、プロの試合開催やキャンプといった事業が目立つが、市が目指すのは「草野球の聖地」である。

 プロ興業のような派手さはないものの、県内外から訪れるチームは着実に増えている。息の長い取り組みにしてもらいたい。

 事業を進める上で重視しているのが、もてなしである。試合にはプロ仕様のスタジアムを使い、電光掲示板に名前を表示する。うぐいす嬢のアナウンスもある。プロさながらの演出が野球好きの心をつかんでいるようだ。

 また、地元の60歳以上の女性でつくるチアリーディングチーム「ABO60」が応援をしたり、交流会に阿波踊り連が出向いたり。その歓待ぶりには誰もが感激するという。

 これは、地域一体となって受け入れ態勢を整えてきた成果といえよう。しかも、住民が試合の運営や応援に汗を流し、大会を盛り上げることで地域ににぎわいと活力をもたらしている。住民の活動の場をさらに広げてほしい。

 県外への積極的な売り込みも見逃せない。11年には北信越5県の高校野球連盟の推薦を取り付け、選抜大会出場校の直前合宿地になった。この春、合宿した福井県の敦賀気比高が選抜大会で初優勝し、市全体が沸き立ったのは記憶に新しい。

 市によると、訪問チームは08年度の61から14年度は147に増加。野球関連の宿泊者も450人から3264人に膨らんでいる。経済効果は年間1億円を超える。

 課題もある。大規模大会では市内外の8グラウンドを使うため、審判員やうぐいす嬢が足りない。養成講座を開いているが、効果はあまり上がっていない。何とか住民の協力を引き出していきたい。

 来月には、市が約5億円で整備した屋内練習場が完成する。雨天でも練習が可能になるため、長期滞在する社会人チームの誘致に乗り出す。実現すれば、より大きな経済効果が期待できるだろう。

 問題は宿泊施設だ。社会人の合宿には、シングルルーム30室以上と大食堂、大浴場を備えたホテルが理想とされるが、市内にはない。

 簡単には解決できない課題だが、地域ぐるみで知恵を絞り、野球のまちの「阿南モデル」を築いてもらいたい。